99年にワーナー・ランバートからインテルに移ったとき、チャールズ・シーリーは2つの会社の文化的類似性にすぐ気がついた。どちらの会社も、新しいアイデアは既定のプロセスを経て慎重に採用する保守的な組織だった。しかしインテルには、技術と結びついた経営管理のアイデアを好む傾向が強く見られた。

この点を踏まえて、ナレッジ・マネジメントチームは自分たちが支持するナレッジ・シェアリング構想をインテルの文化と共鳴する言語に翻訳した。ナレッジ・マネジメントを応用した具体的なプログラムを「専門家発見技術」と名づけたのだ。シーリーは、このように社内で好まれる用語を使ったことが支持を獲得できた理由だったとする。

 

タイミングに留意しよう

アイデアを効果的に伝えて支持を得るためには、方法だけでなくタイミングも重要だ。アイデアやプロジェクトの売り込みをいつ始めるべきかを見極めるためには、まず、そのアイデアが時代の潮流にマッチしているか否かを検討する必要がある。時代の潮流は、実際には組織のムードや市場、それに新しいアイデアを受け入れる積極性を左右するあらゆる経済・社会・政治要因から成る。

新しいアイデアをタイミングよく伝える術に長けている企業幹部は、たいていスキャン(斜め読み)によって時代思潮を把握する。「最もおもしろいアイデアを思いつくのは、本屋で棚に並んだ本をスキャンしているときだ」と、連邦会計監査院の戦略問題担当ディレクター、クリス・ホーニグは言う。

 「本の著者たちが伝えようとしていることに目を通してみよう。本には雑誌には載っていないアイデア、雑誌の記者が取り上げないアイデアがたくさん詰まっている。スキャンするときは、学問分野や業種の垣根を飛び越えなくてはいけない」

書店の棚やオンライン書店で斜め読みするメリットは、適切な時期が来たら、取り出せるアイデアの引き出しを増やせることだ。

組織内の言語文化の微妙なニュアンスやさまざまな新しいアイデアに注意を払うことは、多忙な企業幹部にとってとんでもなく時間を取られる作業に感じられるかもしれない。しかし、その見返りは十分ある。正しいキーと正しいタイミングでアイデアを売り込むために時間を割く人のほうが、実際には素早く支持を勝ち取れるのだ。

(翻訳=ディプロマット)