2016年3月4日(金)

ビールもOK、餃子でダイエット!? 2つの餃子小ばなし

dancyu 2014年5月号

文・遠藤綾子

その1 中国にも焼き餃子はあった!

中国に日本式の焼き餃子は存在せず、ともいわれているが、ホントにホント? 中国全土での食べ訪ねに邁進中の中国料理好きが、愛しの焼き餃子のルーツを中国東北部で発見せり!

聞いたことがあるでしょう? 中国には焼き餃子は存在しないとする説を。焼いた餃子もあるにはあるが、それは残った水餃子を焼いたにすぎないのだという。でもその一方、日本の焼き餃子は旧満州からの引き揚げ者が持ち帰って広めたものともいわれているのだ。

そこへ編集部I女史から情報が。中国本土で焼き餃子を探し当てた人がいるというのである。むむっ! 即その御仁、藤井美夫さんの話を伺うことになった。

当日、藤井さんはスクラップブック持参。聞けば、2008年に中国東北部の瀋陽と長春に焼き餃子を訪ねた旅の記録なのだとおっしゃる。「中国に焼き餃子はあらず説には以前から疑問をもっていたんです」と早速アツ~く語り出す。実は1980年代から香港の料理にはまって通い続けていたが、返還前に取り壊された調景嶺という村で日本のものとそっくりな焼き餃子を数回食べたのだという。

「調景嶺は国共内戦後に共産党に追われた国民党の人々が逃れた村で、香港とは違い、大陸の文化をそのまま残していた場所なんです。だから、大陸に焼き餃子がある可能性は高いと思いました」

さらに、日本の焼き餃子の中国東北部・旧満州伝来説に着目。現在でも土地の料理の情報が集めにくい中国東北部に的を絞り、エイヤッ! と餃子旅に出た。

まず訪れたのは遼寧省の瀋陽。聞き込みをすると、なんと初日にしてゆでずに焼く“煎餃(ジェンジャオ)”の情報をキャッチ! “煎餃”は日本の餃子と焼き具合などが微妙に違っていたが、次の訪問地・吉林省の長春への移動中に“水煎(シュイジェン)”なる餃子情報を得、さらに長春到着後に運命の出会いが。タクシーのドライバーに“水煎餃子”について尋ねたところ、彼が連れて行ってくれたのが「シェン利鍋烙(※)」なる店。円形の平鍋に餃子を並べて焼き、水を差して仕上げる“水煎=鍋烙(グォラオ)”の調理法は、まさに日本の焼き餃子だった。ついに出会えた~っ! と感動に打ち震えたそうだ。ちなみに、他の店でも“鍋烙”を確認。調べてみると、鍋烙とは「焼きつける調理法」のこと。藤井さんは大満足でその餃子旅を締め括った。※シェン=月へんに生

「焼き餃子が確認できたのは東北部でも一部のみ。一般的な中華鍋ではなく底が平たい鍋が調理に必要ですから、水餃子ほど広まらなかったのかもしれませんね」。それにしても、“鍋烙”はいつからあったのか、どうして生まれたのか、など帰国後数年経った今も疑問は泉の如く湧き出るばかり。どうやら藤井さんの餃子巡礼は永遠に続きそうなのである。

藤井美夫
ふじい・よしお●編集者。中国全省で土地の料理を食すべく訪中。フランス料理にも造詣が深く、著書に『もっと気楽にフレンチへ』(オレンジページ)がある。
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