──ホンダは軽自動車からワンボックス、高級車までのフルラインメーカー。どうしても量を追う局面が出てくる。個性を出しつつ万人受けする車をつくる中でホンダらしさを打ち出すのは難しいのでは。

その点では、環境技術が一つのポイントになる。ブレークスルーできる環境技術で世界をリードし、ホンダはらしさを発揮していく。ホンダは従来からのハイブリッド車(HV)に加え、2018年までに北米でプラグインハイブリッド車(PHV)を投入する。また、来春には量産型の燃料電池車(FCV)をリース発売し、20年の段階ではリチウムイオン電池を進化させた航続距離が長い電気自動車(EV)も加わる。電動車両の商品ラインは揃う。

八郷社長が将来を担うと明言したFCV(新型燃料電池車)「クラリティ フューエル セル」。トヨタの「MIRAI」を上回る一充填走行距離700km以上(参考値)、乗車定員も1人多い5名。写真は2015年10月東京モーターショーにて。(写真=amanaimages)
──17年後半(18年モデル)から、米カリフォルニア州のZEV(排ガスゼロ車)規制が強化される。欧州や中国でも強化されていく。従来はかけ声だけで実際に規制は強化されなかったが、今後の見通しは。

私は規制が緩まるとは思わない。確かに不確定ではあるが、昨年末にはCOP21(気候変動パリ会議)で20年以降の地球温暖化対策の新しい枠組みとなる「パリ協定」が採択された。中国であっても環境保全をうやむやにはできないはずだ。何より深刻なのは大気汚染。ホンダとしては中国を含めて、20年まではガソリンエンジンの改良とHV、PHVで展開していく。ZEV規制にもPHVで対応していきたい。

──ZEV規制は大手メーカーに対し、販売台数の一定割合をEVとFCVにするよう義務づけている。

電気自動車をつくっているメーカーに求められているクレジット(ZEV排出枠)には対応していく。ただ、それも短期的だ。根本的にはEVとFCVをつくっていく。

──ホンダはロボットやホンダジェットなど開発に自社内で取り組んできた。一方で環境技術では外部と手を組む。ホンダのモノづくりには、これから何が求められるのか。

FCVの開発では米ゼネラル・モーターズと提携している。環境技術での外部との協調は重要になっていく。モノづくり全体においてはやはり現場、開発するチームが大切になる。開発責任者を中心としたチームが理想のモノづくりに、どれだけ徹していけるか。ただし、メンバーとなる若手に対し、現場感を実感させる施策がこれまで少なかった。メールやテレビ会議に頼らず、例えばサプライヤーさんを訪ねて交流するなど、効率を度外視してでも自らの考えで行動できる職場環境にしていく必要はある。

本田技研工業 代表取締役社長執行役員 八郷隆弘
1959年、東京都生まれ。武蔵工業大学(現東京都市大学)卒業後、82年本田技研工業入社。2006年本田技術研究所執行役員、11年生産本部鈴鹿製作所長。12年ホンダR&Dヨーロッパ取締役社長、13年中国生産統括責任者。14年常務執行役員、15年6月より現職。
(永井 隆=インタビュー・構成 市来朋久=撮影 amanaimages=写真)
【関連記事】
ホンダ次期社長 八郷隆弘 -異例の「抜擢人事」でホンダは再生できるか
日本企業がリードする燃料電池車の実用化は
「ホンダジェット」型式認定取得で描く次なるシナリオ
迷いが晴れる「松下幸之助と本田宗一郎」入門【1】
「VWショック」は日本勢に追い風となるか