最古参ウォッチメゾンの本領が見える

アトリエ・キャビノティエは、日本では東京・銀座の中央通りにある銀座ブティックでオーダーを受け付けている。現在、オーダー中の日本人もいるとか。
東京都中央区銀座7-8-8 電話03-3569-1755

アトリエ・キャビノティエは2006年に始動し、今年で10周年を迎える。最初はベルナス氏のほか3人の時計師だけのチームだったが、現在は10名の専属スタッフを擁し、常時40ほどのプロジェクトが同時進行する。製作期間は、最短でも1年、機構面にリクエストがあるものだと最低3年は要するという。

「スペシャルオーダーの難しい点、そして時間を要する点は、誰も見たことがないものをつくらなければならないということ。顧客からすればまったく形のないものを注文するわけですから、そこで最も重要になるのが信頼関係です。ブランドへの信頼、私への信頼、そして時計師への信頼があってこそ成り立つ時計づくりなのです」

アトリエ・キャビノティエの時計づくりは、最初の顔合わせに始まり、顧客へのヒアリング、デザイン画の提案、素材の決定、プロトタイプのチェック……など、幾多のプロセスを要し、さらに将来的にも1点ものでなければならないため、新開発したムーブメントや装飾を通常のコレクションにそのまま使うことはない。なぜそこまでしてスペシャルオーダーの時計をつくるのかという疑問を再びベルナス氏にぶつけてみた。はたしてビジネス的なメリットはあるのか、と質問を変えて。

「アトリエ・キャビノティエは、ブランドのステータスを高めるという点でビジネスと捉えています。1点ものの時計をつくるには有力な人材と時間が必要で、ブランドからすれば資金力と時計づくりの総合的な実力が問われます。アトリエ・キャビノティエとはすなわち、われわれのブランドにそれらがあることの証しです。10年近く続けてきて、予想以上の手応えがある。今後も途絶えることなく、よりニーズが高まるビジネスだと確信しています」

ヴァシュロン・コンスタンタンは昨年、創業260年を迎えた。創業以来、間断なく事業を継続する最古参のウォッチブランドである。富裕層のあらゆるニーズに対応し、1点ものを製作できるのは、薄型時計からコンプリケーションまで広範囲にわたる時計技術の長年の蓄積があり、古典から前衛までの芸術的価値を創造する柔軟な美意識があればこそだ。広くて深いウォッチメーキングのノウハウ、ニーズを捉えるビジネス的センス、そして新しいことに取り組む先進的な姿勢。アトリエ・キャビノティエは、このブランドのすべてを物語るようである。

ヴァシュロン・コンスタンタン
0120-63-1755
http://www.vacheron-constantin.com/jp/

(取材・文/デュウ 撮影/高橋一輝(人物) 写真協力/ヴァシュロン・コンスタンタン)