個人にとって悪い事はない?

個人への影響を考える場合、ブロック・チェーン技術を利用した仮想通貨についても言及しなくてはいけない。

足元の変化で注目すべきなのは、昨年12月の金融審議会(首相の諮問機関)で「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」で最終報告書が取りまとめられ、仮想通貨に関する規制の枠組みなどが盛り込まれた事だ。

テロ資金等を含むマネーロンダリングへの国際的な対応の高まりもあってだろうか、金融庁は仮想通貨を扱う取引所の登録制を導入し、監督し、資本規制等で利用者保護もする方向だ。関連法の改正案を国会へ提出すると思われる。

今後は伝統的金融サービスと仮想通貨サービスが交差するのだろうか。投機的な目的で仮想通貨を見た場合を除けば、伝統的金融機関を含めた清算・決済の利便性は良くなる事はあっても、後退はしないだろう。

従来は自由、低コスト、そして利便性の高い仮想通貨だったが、同時に監督庁が不明で、消費者保護が無かった事も事実。今後このバランスがどう変わっていくのかは興味深い。

どのような形のブロック・チェーンであろうが、世界経済フォーラムの調査報告書が指摘した通り、業界挙げての取り組み「エコシステムの形成」がとても必要なFinTech分野だ。技術的には国境に囚われる事無く開発を行い、日本独特の経済・金融環境に合った形で、日本ならではのエコシステムが形成される事を期待したい(貢献したい)。

おことわり:本コラムの内容はすべて執筆者の個人的な見解であり、トムソン・ロイターの公式的な見解を示すものではありません。

渡邊竜士(わたなべ・りゅうし)●トムソン・ロイター・マーケッツ執行役員。1972年、東京都生まれ、米国育ち。96年慶應義塾大学総合政策学部卒、同年野村證券入社。99年スイス野村バンク、2006年野村證券グローバルヘッジファンドセールスなど、主に国際部門にて経験を重ねる。12年野村インターナショナル(香港)のマネージング・ダイレクターを経て、14年よりトムソン・ロイター・マーケッツに入社して現職。トムソン・ロイターの経営企画や営業戦略等を担当している。
→トムソン・ロイター・ジャパン ViewPoint http://viewpoint.thomsonreutersjapan.jp/
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