【田原】中澤さんはカシオを辞めて、カフェをおつくりになった。ずいぶん唐突な気がするけど。

【中澤】携帯電話の商品企画もそうなんですが、私は何かお題があって知恵を絞るということが好きなんです。でも、機械オンチだから、電気製品はつくれない。自分1人でできるのは料理と空間かなと思って秋葉原でお店を始めました。

表を拡大
UPQ社長 中澤優子氏の経歴

【田原】メーンはパンケーキだそうですね。パンケーキがお好きなの?

【中澤】いえ、じつは嫌いです。私、生クリームが苦手で(笑)。

【田原】なぜパンケーキを?

【中澤】理由は2つあります。まずカシオで「自分が好きなものは誰でもつくれる。ユーザーが欲しいものを考えられたら商品企画として一人前」と教えられたから。それに、そもそもお店を始めたのは、カシオでリストラにあった先輩たちが一息つける場所をつくりたかったからということも大きい。私にものづくりの楽しさを教えてくれたオジサンたちの中には、ハローワークに行っても仕事がなく、奥さんに逃げられて自殺を考えた人もいます。夜にお酒が入ると愚痴っぽくなるので、明るいうちに甘いものを食べて、みんなにハハッと笑ってもらえたらいいなと。

【田原】開店するまでにどれくらいかかったんですか。

【中澤】1カ月です。普通は3カ月かけるそうですが、私は3カ月も何もしないで過ごすことができないタイプなので。

【田原】カフェの経営はうまくいったのですか。

【中澤】はい。おかげさまで今もやっています。秋葉系のオタクちゃんから、すごくオシャレなオネエサン、おじいちゃんおばあちゃんまでいろんな人が来てくれて、私にとっていいインプットの場になっています。なので、カフェはカフェで続けていくつもりです。

田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
【関連記事】
iPhoneは変なのか、違うのか……? 180°視点を変える発想法
大手メーカーOBを集めてヒット連発! アイリスオーヤマの秘密【1】
孫正義の参謀が見た「日本ケータイ三国志」の真実
“ガラケー”が、むしろ賞賛されるべき理由とは
価格10分の1の商品も。ジェネリック家電入門