「院政」も色濃く残る社長禅譲も

総合スーパーはヨーカ堂に限らず、イオン、ユニーグループ・ホールディングスも苦戦を強いられ、抜本的な事業構造見直しは避けられない。ファミリーマートと今年9月に経営統合を控えるユニーも、約50店舗の総合スーパーを閉鎖する計画だ。ヨーカ堂は就任1年8カ月に過ぎない戸井氏が業績不振の責任を取って辞意を表明した事情もあり、2006年9月から14年5月まで社長を務めた亀井氏を急遽、再登板させた。

非常事態に直面し、実績のあるトップ経験者が返り咲く例は、家電量販最大手のヤマダ電機が典型で、今回のヨーカ堂と共通点もある。最盛期には積極出店により家電という単一商品分野で売上高2兆円を突破し、総合スーパーをも凌駕した同社は、その後、インターネット販売の台頭や消費税増税の影響などから業績が悪化し、創業者の山田氏が13年6月に会長から社長に緊急復帰し、全取締役を降格するショック療法で立て直しを急いだ。その後、不採算店舗の大量閉鎖など大なたを振るい、「構造改革が軌道に乗った」(山田氏)と判断し、4月1日付で親族以外初の社長兼COOに桑野光正取締役兼執行役員常務を指名した。

キヤノンも12年3月に社長に返り咲いた御手洗氏が今年3月30日付で会長兼CEOとなり、真栄田雅也専務に社長職を禅譲する。ただ、同社の場合、御手洗氏が経団連会長を退任後、08年に会長として経営の第一線に復帰したものの、後継者育成に躓き、12年に社長に返り咲いた経緯があり、いささか事情は異なる。同氏の社長復帰後は明確な成長戦略が描けず、エクセレントカンパニーとしての存在感は薄れ、真栄田氏には新たに成長戦略の仕切り直しを託す。

ヤマダ電機は山田氏が会長兼取締役会議長として住宅事業の収益拡大を担い、キヤノンは御手洗氏が会長兼CEOにとどまり「会社全体を見ていくことに変わりはない」と述べており、「院政」も色濃く残る。その意味で、社長禅譲は名ばかりと受け止められかねない。

(宇佐見利明=撮影)
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