なぜ高いリース料で満足するか

ところが、コピー機の性能が上がったおかげで、それまで印刷所に発注していたパンフレット制作の費用や手間が不要になったので、お客である私たちも大いに満足している。

価格は高くなっても、それを超えるメリットがあると理解してもらうには、「お客様にとって、本当の価値はその商品のどこにあるのか」を知ることが決定的に重要だ。コピー機のリース料を上げられるのも、営業マンが当社の業務を観察し、その中でコピー機がどんな役割を果たしているかを理解したうえで、次に必要となりそうな機能を提案しているからなのだ。

車を買い求めるお客様の中には、足の不自由なご両親のために新しい車を買おうと考えている人もいる。そういうお客様に、なぜ車を買おうとしているのか尋ねもせずに、パワーがどうの、ハンドリングがどうのといった話をしても、しらけるばかりである。まずはお客様の生活、持っているストーリーを把握し、そのどこに商品が当てはまるのかを考えることから始めなくてはならない。つまりお客様のニーズを聞き出す力が大切なのだ。

「売れる営業マン」のイメージは、おそらく一般的には「話し上手」「言葉巧みにお客様を説き伏せる」というものだろう。だが、実際は違う。

社内で行う営業のロールプレーイング大会で入賞する営業マンなどは、セールストークが実に流暢だ。だがそういう人たちが各支店でトップセールスをあげているかというと、必ずしもそうではない。

営業マンに本当に大切なのは、口のうまさではなく、「このお客様は何を求めているのか」を知る力なのだ。そこを踏まえて商品の価値を訴求することで、価格の壁を越えることも可能になる。

プラクティカル・ビジネス・コーチング マネージャー 
大久保政彦

1965年生まれ。自動車ディーラーを中心に、営業マネージャー・営業マンへ実践的コーチングを行う。財団法人生涯学習開発財団認定コーチ。
(久保田正志=構成 澁谷高晴=撮影)
【関連記事】
さらば値引き、御用聞き。ダメ営業マン変身プログラム
会議室への入室、名刺交換……「商談」マナー体験レッスン
ケチ客・キレ客を手なずける、最上級の「いなし方」
商談中に話が脱線。本題に戻すベストな方法
なぜ、「単価の高い」商談を後回しすべきか