なぜ男性の育休にアレルギー反応が大きいのか

宮崎議員の育休宣言に対し、「公職にある政治家が、公務よりプライベートを優先し、育休中も歳費が全額支払われるのはおかしいのではないか」と国民の反応は厳しい。

これについて、宮崎議員は、「育休中は、自宅でできる仕事を行い、何かあれば事務所に駆けつけます。重要な法案があれば当然出席します。育休期間の歳費については、全額を選挙区外の福祉団体へ手取り額の全額を寄付(政治家が選挙区内の人に寄付を行うことは禁止されているため)します」と説明する。

宮崎議員の育休宣言を、組織で働く人々はどう受け止めているのだろう。

「国会議員と中小企業で働く私とは、世界が違うなと感じました。うちの会社の男性社員で育休を取る人は皆無です。女性社員が育休で休むだけで、仕事を回すのに大変なのに、男性まで育休を取ったら会社は潰れてしまいます」

そう言うのは、中小企業に勤める40代女性社員。

「新入社員はもう10年以上採用していません。ずっと人手は足りていませんが、業績が上がらず、人員を補充できない。育休を取った人の仕事は、いまいる人員で吸収しなければなりません。育休であいた人員の穴を埋めるための人事異動が、業務の混乱と組織の疲弊を引き起こしている。しかし、育休推進は人口減少に歯止めをかけるための政府の重点政策だから、企業は従わざるを得ない。本音を言えば、突然育休を取得するスタッフにみんな迷惑をしている。育休を取る人と、それをフォローする人たちの間には、険悪な空気が流れています」

大企業でも、男性の育休についてはアレルギー反応が大きい。「最近、うちの部署にも育休を取った男性社員がいますが、事前に人事課や所属に適切に相談しなかったため、人事の調整に大変手間取り、騒動になりました。我が社に限って言えば、育休を取る男性は、日頃から自分の権利ばかり主張して、周りの迷惑を顧みないタイプが目立ちます。育休を取得する男性は一様に、『社会性がなく出世を諦めている変人』というレッテルが貼られています」(30代男性社員)

企業には余剰人材を雇用する余裕はなく、育休を取る人、フォローする人両方にかかるプレッシャーは大きい。日本では、育休制度はいまだ試行錯誤の段階である。まずは育休を快く受け入れられる体制づくりが必要である。 この点に一石を投じたのが宮崎議員の育休宣言であろう。

財源確保の課題はあるが、たとえば育休対応にかかる人件費を政府が負担するといったような対策は考えられないのだろうか。また、テレワークの推進等で、育休中も家で仕事ができる環境が整備されれば、いまよりもずっと、育休によって組織で生じている摩擦は減少するだろう。働く人たちが気持ちよく仕事し、業績を上げていくのが企業の理想だとすれば、育休を取得する人の立場を守るだけではなく、育休をフォローする立場の人たちに「育休取得者の仕事を押しつけられている」と感じさせないことが大切だ。

「育休取得」によって、組織に多かれ少なかれ負担が生じるのは事実である。復帰後に、それをどのような方法で挽回するかが大事だ。育休を取るという権利を主張するだけでなく、フォローしてくれた人たちへの感謝をもとに仕事に取り組めば、それは周囲に伝わるはずだ。「育休アレルギー」は薄れていくだろう。