設立1年で120件の相談を受け、40件の見積もりを作成、28件の葬儀を行った。17社とネットワークを持ち、地方で葬儀を行うことも可能だ。

同社の伊藤茂雄社長は「いとう」の三代目社長でもある。「昔ながらの良さが残る長野に比べ、東京の葬儀は形式的で問題が多いと感じた。都内では全体の3割が近親者による火葬だけで済ませていると聞く。命の尊厳が希薄化するなか、業界全体の変革を促すため、情報発信力の強い東京に進出しました」と起業の意図を語る。

その背景には、葬儀業界を覆う危機感があるという。「長引く不況や独居率の増加などが原因で、葬儀の小規模化、単価の下落が続いている。このままでは先行きは厳しい。そこで内側から業界を変えようと思ったんです」。

現段階ではショールーム的な位置づけのため、売り上げは同業他社へのコンサルティング業で稼いでいる。本年度中にフランチャイズ化して「ディグニティ」ブランドを浸透させる計画だ。

同社が独自に行った調査では、7割の人が「(相談したいが)適切な場所が見つからない」と答えている。やはり潜在的な需要は大きいらしい。

そこに切り込むのが、03年に設立された「オールネイションズ・ソサエティ」だ。アメリカで一般的な「生前予約制」を導入し、合理的でシンプルな葬儀プランを提供する。顧客の7割が利用する家族葬なら55万円からとリーズナブルな価格が売りだ。「生前予約は3000件に達しました。高学歴の方ほどシンプルな葬儀を好まれます。故今村昌平監督のご葬儀も担当しましたし、有名人の予約も多い。外資系だ、黒船だといわれますが、日本の葬儀会社とも良い関係を築いていますよ」とジョン・キャム社長は話す。

父親がコロラド州で葬儀会社を営んでいるため、自身も十代から葬儀ビジネスに携わってきた。「日本ではほとんどの場合、病院などの紹介で葬儀社を決める。参入するなら『生前予約しかない』と思ったんです。日本の葬儀費用が不当に高いのは、業者間の顧客紹介料が上乗せされているから。それをなくせば格段に安くなるんですよ」

安さで選ぶか、内容を取るか。ウエディング同様、葬儀もじっくりプランニングする時代が来たようだ。