2016年2月16日(火)

「神様」ではなく「王様」? 客の無理難題にどこまで応えるべきか

おもてなし達人の流儀:日本橋高島屋コンシェルジュ

PRESIDENT 2014年9月15日号

長山清子=構成 澁谷高晴=撮影
「おもてなし」には、ただの接客にはない、何か特別な響きがある。一流のサービスを提供するプロフェッショナルが、その極意を披露。

「おもてなし」って一体何だと思いますか。百貨店など小売りにおいて、私たちの提供するサービスは2種類に分けられます。一つは販売行為としてのサービス。お客様の求める商品を提供することから、ご相談に乗ること、修理修繕、値引きや粗品を差し上げることも含まれます。

日本橋高島屋コンシェルジュ 敷田正法氏

片やおもてなしというのは、ビジネスマナーにのっとった服装をして身だしなみを整えたうえで、挨拶、態度、言葉で歓迎・感謝の気持ちを表現することです。ホスピタリティーとも言い換えられます。サービスにホスピタリティーが伴わなければ、お客様は満足しません。たとえばある商品をどんなに安く買えたとしても、店員がそれを投げて寄越したとしたらどうでしょう。それよりは店員が目を見て、笑顔で「ありがとうございます」と言って手渡したほうが満足度は高いのではないでしょうか。つまりサービスとホスピタリティーが融合して初めて顧客満足に結びつくのです。したがっておもてなしとは、お客様と信頼関係を築く行為であり、「また高島屋に来よう」と思っていただくためのものだと言えます。

おもてなしのコツは、「相手がしてほしいことは何か」を考えて、その通りにして差し上げることです。しかしお客様の求めるものは千差万別でたいへん読みにくい。それを解決する方法の一つが、選択肢を多く提示して、お客様に選んでいただくことです。

以前、「ティファニーに行きたい」というお客様がいらしたことがありました。しかし日本橋高島屋では扱いがない。そこで「近くの三越さんでしたらございます」と答えました。ライバル店に塩を送ることになっても、お客様のためを思っての行動でしたが、「私は高島屋でしか買い物をしないのよ」と叱られてしまった。それ以来私は「当店にはございませんが、都内の高島屋ですと新宿店と玉川店、この近くでしたら三越さんにございます」と選択肢を多めに言っています。

選択肢を多くするには、勉強したり、困ったときに助けてくれる人脈を築いたりして、自分の引き出しを増やす必要があります。そうすれば、どんな無理難題に対しても、ノーと言わずにすむようになる。私はどんなに難しいことでも「ありません」「できません」「知りません」で終わらせず、「その代わり○○はいかがでしょう」と代替案も示すことにしています。お客様のご要望にノーと言わないのは、お客様は「神様」ではなく「王様」だから。王様は無理難題を言うけれど、神様は言わないでしょう。お客様のおっしゃることはすべて聞いて差し上げる。それがおもてなしだと思っています。

日本橋高島屋コンシェルジュ 敷田正法
1947年生まれ。早稲田大学卒業後、高島屋入社。外商部、NY店などを経て、2000年より日本橋店のコンシェルジュとなり、定年後の今も勤務。著書に『日本橋高島屋コンシェルジュの最高のおもてなし』。

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