劣等感を植え付ける本から脱却せよ

私は「予測と制御」を超える新しい方法論を「超・自己啓発」と呼び、想定外をポジティブに捉えて、偶発性を人生に活かす生き方を近著で提起した(『一生モノの超・自己啓発』朝日新聞出版)。

そのポイントは、昨日まで成功した手法を大胆に捨てることから新しいライフハックが始まる、という点である。ここにはミリオンセラーとなった『超・整理法』と同じ構造がある。すなわち、劣等感を植え付けるビジネス書からの脱却が、「とりあえず」必要なのだ。

さらに、近著では具体策として、「整体」という言葉を最初に考案した野口晴哉(のぐち・はるちか 1911~1976)を紹介した。野口は想定外に満ちた世界で生き抜くため、「体の声を聴く」「体の癖を読む」という画期的な方法論を提案した思想家だ。最近、こうした戦略に対して、ビジネス書から離れた読者からの注目が急速に集まりつつある。

では、ビジネス書の未来はどうだろうか。自己啓発書はいつの世にも必要とされるが、その方法はマッチョな成果主義から、「いまあるものを使って」事態を凌ぐ方法へ置き換わるだろう。特に、スケジュールを管理し意識へ訴えかけるのではなく、「体の癖」を解読して無意識に働きかける、など「超・自己啓発」的な発想が独自に展開するに違いない。

さらに、自己啓発を促すメディアも劇的に変わるだろう。現在でも紙の本から電子書籍や動画サイトなど、全く新しい形で伝えられるようになってきた。今後、予想すらしなかったメディアが現れても何ら不思議はない。ビジネス書のジャンルは滅びないが、伝達メディアはさらに多様化すると考えられる。近い将来、異分野から優れた才能が参入し、「超・ビジネス書」という売れるジャンルが再び蘇ることを楽しみにしている。

※1:日本出版販売「出版物販売額の実態2015」によると、2004年の売上高を「1」とした場合、全体合計では68.8%のマイナスだった。11の分類ごとに見ると、最高値は「コミック」の94.9%で、最低値は「専門」の45.9%だった。
※2:鎌田氏は同書で「巨大地震の発生を、日時の単位で正確に予測することは今の技術では全く不可能である」としたうえで、「過去に起きた例から東日本大震災より一桁大きい被害をもたらす巨大地震(いわゆる南海トラフ巨大地震)が2040年までに西日本で確実に起きる」と論じている。

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