「サービス付き高齢者向け住宅」に注目する土地オーナーが増えている。高齢化が加速するなか、政府が支援に注力していることもあって、市場は成長中だ。高齢者住宅に詳しい(株)タムラプランニング&オペレーティングの田村明孝代表取締役に、事業化のポイント、今後の動向などを聞いた。

サ高住の可能性は大きく、参入する事業者も多い。これから着目すべきなのは「独自性」

ピークは2025年以降
課題となる高齢者の介護

田村明孝●たむら・あきたか
株式会社タムラプランニング&オペレーティング 代表取締役

1987年設立。高齢者住宅の開設コンサルティングを手がける。全国の高齢者住宅と介護保険居宅サービスのデータベースを作成し、事業者・シンクタンク・金融機関などに提供。入居希望者への相談センターも運営する。

2011年10月の「高齢者住まい法」の改正を機に登録がスタートした「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)。その名のとおり、高齢者が単身、あるいは夫婦で安心して暮らしていくためのサポートを充実させた「住宅」のことである。厚生労働省が所管する公的な「特別養護老人ホーム」(特養)などの「施設」とは、役割や目的などの面で一線を画している。

とはいえ「特養の入所待ちが52万人」ともいわれるなか、その受け皿として期待する声が高まっているのも事実だ。民間による新たな発想が盛り込まれ、質の高いハード・ソフトをそろえたサ高住が次々に登場。家賃設定の幅も広く、多くは介護事業所を併設していることもあって、ニーズはさらに拡大すると予測される。

「特に団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年以降、介護を必要とする人口が大きなピークを迎えます。その時期までに、高齢者向けの施設や住宅の供給を、どこまで増やし、整備していけるか。これが今後の日本にとって大きな課題です。その危機感を踏まえて、政府もサ高住に対しては、補助金や優遇措置などでテコ入れしている。近年、土地所有者が賃貸アパートや商業ビルなどと同じように、サ高住を一つの選択肢としてとらえるようになったのは、市場の将来性や安定性を見込んでの判断ですね」

こう語るのは(株)タムラプランニング&オペレーティングの田村明孝氏だ。同氏は長年、高齢者住宅の開設や運営、募集のコンサルティングに従事。厚労省や国交省による制度改編を含め、現場の実情にも詳しい。そうした視点から、「サ高住は、介護サービスをしっかりとセットすれば需要を取り込むことができます」と分析する。

政府が打ち出した施策によると、2020年までに約60万戸を整備する方針。現在の登録戸数は20万戸(グラフ参照)に迫り、今後も建設費の補助金支給と固定資産税や不動産取得税、さらに所得税、法人税などの優遇措置を継続することで供給を促進している。

「ここ数年、サ高住は年間約3万戸のペースで増加しています。この供給量は特養やグループホーム、介護付き有料老人ホームなどと比較しても、際立って多い。それに伴って事業者間の競争が激化。新規参入に際しては、事前の事業プランの構築がますます重要になるでしょう」