中国の広州、深センなどの市長トップ級が7月末に来日し、トヨタやホンダなど電気自動車(EV)を中心とした新規投資を求める動きが報じられている。この「電気自動車」詣でが、なぜ起きようとしているのか。その真相に迫る。

トヨタと提携した米テスラ社にとっても中国は「巨大市場」だ。(AFLO=写真)
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トヨタと提携した米テスラ社にとっても中国は「巨大市場」だ。(AFLO=写真)

6月30日、中国鉄道省が主導し北京~上海間の1318キロメートルを結ぶ高速鉄道が開通した。いわゆる中国版新幹線(CRH380A)である。しかしながら、中国南車製の同車両については、日本の川崎重工から導入した東北新幹線「はやて」などの技術をベースにしたものだといわれている。それにもかかわらず、中国は南車製の車両をアメリカに特許申請する方針とみられている。

このような高速鉄道の分野で起きた事例を参考にすると、外国企業から供与された技術にわずかながら“改良”を加え、それを自分たちの「独自技術」とする事例が発生している。当時の契約では、供与された技術を中国市場以外では使用してはならない、もしくは中国市場以外ではその技術を使用した製品を売ってはならないという規約があるにもかかわらず、中国政府は契約違反を犯そうとしているという批判が起こっている。

同様に、エコカーの分野でも高速鉄道の場合と同じような契約違反、つまり外国から導入した技術に改良を施し、あたかも自分たちのものとし、事実上その技術を奪い取ってしまうという可能性も懸念される。ある外国自動車メーカーの幹部は、「たとえわれわれの出資比率が過半数を取れなくても、われわれが本来所有する技術を、支配し続けられるような契約・合意を早急にまとめる必要がある」と述べる。

自動車の販売台数では、中国はすでに09年から世界トップであり、中国での販売は、多くの外資自動車メーカーにとって重要な利益の源泉となっている。

しかしながら、中国には、世界の舞台で競争できる自国の自動車メーカーがない。BYDなど中国の民族系電気自動車メーカーも誕生しているが、世界の戦略車にはなりえていない。

中国政府は、最近の電気自動車ブームを、国内の自動車産業を世界のトップレベルに押し上げる好機と捉えるからこそ、中国メーカーが出資比率51%を確保する案の実施を検討し始めたのだ。

中国のこの計画を実施する梃子(てこ)となるのが、躍進を続ける中国の国内市場である。08年の金融危機後、世界の企業にとって中国市場の重要性が増している。同国は10年にGDPで、日本を追い抜き、今や世界第二の経済大国でもある。

中国という市場は多くの多国籍企業にとって、もはや不可欠な存在である。これらの企業は、中国に対して積極的な投資を続け、鉄鉱石、自動車、パソコン、ビール、ボルドーワインに至るまで、中国はあらゆる分野で世界のトップ市場に急成長したのだ。

こうして中国政府は躍進を続ける自国の市場を利用し、中国の国内産業の成長を後押しするため、多国籍企業が保有するハイテク技術の移転を求めてきたのだ。