「顔に傷」で1000万円超え

交通事故では、慰謝料のほか、「積極損害」と「消極損害」が支払われる。積極損害は事故によって余儀なくされた病院への交通費、治療費など。消極損害は「事故に遭わなければ得られたであろう利益」を補償するもので、「逸失利益」と「休業損害」に分けられる。たとえば事故により数カ月休業することになれば、その間受け取れるはずだった収入をもとに、休業損害が認められる。休業損害は女性よりも男性に高い金額が支払われるケースが多いが、これは性差というより、収入差によるものだ。

一方で、完治しない後遺障害(後遺症)が生じた場合の賠償である逸失利益は男女の別で差が表れやすい。冒頭でも紹介した「後遺障害別等級表」では、後遺障害の程度により、第1~第14級に分けられている。これは、後遺障害によって労働能力がどれほど低下するかを軸に据えている。たとえば、第1級にあたるのは両目の失明、両脚をひざ関節以上で失う、両腕をひじ関節以上で失う、などの場合で、最高3000万円。

外見に著しい醜状を残す場合は第7級(労働能力が56%以上喪失されたとみなす)で、最高1051万円。外貌に相当程度の醜状を残す、生殖器に著しい障害を残す場合はともに第9級で、最高616万円だ(これらはあくまで自賠責保険の上限であり逸失利益の総額はそれ以上のことがほとんどだが、そこは任意保険で補填される)。

等級が上がるほど認定の基準がはっきりしているので揉めることは少ないが、第14級の「局部に神経症状を残すもの」などは認める、認めないの論争になることが多い。「むち打ちで首の調子が悪いだけでなく、PTSDの状態にあるので、少なくとも14級は認めるべし」などと主張することになるが、その場合も、やはり女性のほうが主張を認められやすい傾向にある。また、男女差が是正されたとはいえ、モデルの顔に傷が残れば「労働力の著しい低下につながる」という主張が通りやすいのは女性のほうかもしれない。「未婚なのに、顔に傷が残ってしまって、結婚できないかもしれないと悩んで鬱になった」などのロジックで、賠償額を少し上げられる可能性が高いのも女性ならではだ。