死ぬ気で打ち込め、リスクをとれ、本気で勝負しよう

もしかしたら、まったくお客様が集まらないかもしれない。日本語で上演したら、UAEのお客様には歌舞伎の面白さを理解してもらえないかもしれない。考えはじめたらいろいろ心配なことはありますが、悩んだところでリスクが消えるわけではありません。それよりは、リスクをとると決めて入念に準備したほうがいい。この公演は日本からも参加できます。よかったらUAEへ私の生き様を観に来てください。

私はこのような考え方をしているので、日本企業の会議などに決定権のない人間が何人も参加して「ああでもない」「こうでもない」と話し合っているのを見ると、なんてもったいない時間の使い方をしているのだろうと思ってしまいます。海外で働いている友人の仕事ぶりを見ていると、そのことを痛感させられます。海外ではもっと大きなことも即座に決断されて、どんどん話が進んでいきます。日本で1週間に1つの決断が行われるなら、海外の超一流の人たちは1日に50の決断をしているとその友人から聞きました。

日本人は少し大きな話になると「上司に確認します」「一旦持ち帰って検討します」と決断を先延ばしにします。先ほども言ったように、考えたからといってリスクは消えないし、考えた時間が長いだけ、準備に使える時間は減っていきます。

また、「前はこうだったから」と経験則で考えた段階で、過去にとらわれてしまい、新しい情報が入り込む余地はなくなります。また、新しい状況を純粋に見ることができないから、臨機応変な対応力も低下してしまう。

「それまでの努力」のようなものを評価しすぎるのも問題です。たしかに、みんなで頑張ってきたかもしれない。たくさんのお金を研究につぎ込んだかもしれない。でも、たとえば電化製品なら、お客様が使いやすいものが一番で、必要のない機能を「研究成果だから」「頑張ってきたから」と追加するのは誰のためにもなっていないわけです。歌舞伎の公演だって、いくらみんなが何カ月も練習していても、そんなことはお客様には一切関係ない。いいものを見せることが一番大切なのだから、必要なら直前になってすべてをひっくり返すのもアリでしょう。自分ならそうするし、どんなに大変でもそのリスクをとります。