一方、民間企業の動きも急だ。その代表的な成功事例となっているのが日本旅行である。中国の北京優翔国際旅行社と提携して、2009年4月から中国人富裕層を対象としたPET(陽電子放射断層撮影装置)検診と観光を組み合わせたツアーの受け入れを開始。09年度の実績は約40名、10年度はこの10月までに約130名を受け入れた。

日本旅行の検診の受け皿で最先端の医療機器を備えた聖授会のOCAT予防医療センター。

日本旅行の検診の受け皿で最先端の医療機器を備えた聖授会のOCAT予防医療センター。

1泊2日の検診を含めて4~5日間のスケジュールが組まれることが多く、一人当たりの平均費用は100万円。これまでの最高額は北海道の観光を組み合わせた200万円だ。ただし、「参加者は北京優翔国際旅行社への手数料や航空券代を別に払うので、総額では400万円弱になっているのでは」と同社海外営業部の青木志郎中国担当部長は話す。

日本旅行の成功の要因は2つある。健康意識の高い中国人富裕層の顧客を数多く持ち、スイスへのアンチエイジング旅行などの実績を挙げていた北京優翔国際旅行社と提携したこと。そして、検診の受け皿である大阪の聖授会OCAT予防医療センターが、中国人富裕層の高級志向にマッチした施設であったことだ。

中国語への対応も万全だ。

中国語への対応も万全だ。

宇宙空間をイメージした同センターのなかには、1脚40万円もするイタリア製のリクライニングチェアが置かれている。中国人の受診者に一番人気のある検診コースは30万9000円の「総合がん検診コース」。ちなみに日本人でも検診料は変わらない。山村晃之事務次長は「中国の方々は自分の健康は自分で守る意識が強く、そのことが検診ツアーの人気につながっているのでは」という。

近畿日本ツーリストも北京、上海など中国全土で10社の旅行会社と契約を結んで、中国人富裕層を集客する手はずを整え、10年7月から受け入れを開始。また、ジェイティービーも10年4月に子会社のなかに「ジャパンメディカル&ヘルスツーリズムセンター」を設置。日本国内での受診手続き、通訳や宿泊先の手配など総合的にサービスを提供する体制づくりを進めている。

※すべて雑誌掲載当時

(坂井 和、本田 匡=撮影 PANA=写真 徳島県=写真提供)