部下の意思尊重が上司のスタンス

こう見てくると、グーグルの社内の雰囲気は自由闊達なように思えるだろう。実際にグーグル日本法人の社内は、和風をイメージしたインテリアで彩られていて、随所にフリースペースが設けられている。仕事をするもよし、休憩するもよし、立ち話なども大歓迎で、そこかしこで楽しそうに社員が話し込む姿を見ることができる。

「イノベーションは自由な雰囲気のなかから生まれます。私は執行役員ですが、普段肩書は気にしません。誰でも世界中の仲間に向けて自由に発言できます。自分にアイデアがあれば、部署や職位に関係なく誰にでも直接相談して一向に構わないのです」(川合さん)

自由な雰囲気という点でいうと、グーグルには「20%ルール」もある。仕事時間の20%を自分の好きなことに使え、お馴染みの「Gmail」や「Google日本語入力」なども、これを活用して生み出されてきたのだ。

「10Xを実践していくのには集中力が必要で、プライオリティの低いプランやアイデアはどうしても後回しにしがちです。しかし、そのなかに将来有望な“原石”があるかもしれない。それを探して磨いていくのに活用していくのが20%ルールです」(同)

20%ルールでは、やりたいことを本人が上司に伝えるが、そもそも好きなことをするとはいえ、ストップをかけなければならないほど突拍子もないものは出てこないそうだ。それは普段からコミュニケーションを密にしていることも影響している。

週1回、上司とチームメンバーの1対1のミーティングが行われ、ビジネスの進捗や問題点の共有を図るなかで、何を考えているのかを上司は把握する。いま川合さんのチームには、20年開催の東京オリンピックに向けた企業のニーズ発掘に20%ルールを活用しながら取り組んでいるメンバーがいて、川合さんは応援役に回っている。

「10X」「自由」「20%ルール」――。閉塞感を払拭し切れない日本企業にとって、学ぶべき点が多いはずだ。

(稲垣純也=撮影)
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