クレジット普及進まぬ日本は、逆にチャンス?

Disrupter(破壊者)としてのFinTechが注目を集めがちだが、この分野ではEコマース経済の拡大へと繋がる事で、伝統的金融機関(クレジットカード会社や銀行等)も恩恵を被る事ができる。実際、三井住友カードはSquareと資本提携(1000万米ドル出資、2013年)、クレディセゾンはCoiney(コイニー:数少ない日本発の決済FinTechベンチャー)と資本提携(5億円、2013年)。伝統的金融機関ではないが、ソフトバンクは2012年にPayPalと合弁会社PayPalHereを設立した。

少し話題はそれるが、そもそも日本においてはクレジットカードの利用率が低く、個人消費支出に対して18%程度でしかない(デビットやチェックの利用はほぼ無く、残りは大部分現金決済)。米国ではカード24%・デビットやチェック30%、英国ではカード25%・デビットやチェック28%だ。因みに、国民1人当たりのカード保有枚数は約3枚弱で、特に日米英で違いは無い[注2]

鶏が先なのか卵なのか、クレジットカードを導入できていない個人事業主を含む中小企業は約190万[注3]あると言われており(日本の中小企業数は約385万)、その多くは審査の煩雑さや、カードリーダーの設置・維持コストと思われる。

また、Eコマースへと目を向けると、既に日本の約25%の世帯がEコマース(インターネットを利用した支出)ユーザーである[注4]。一方、中小企業の小売業・サービス業におけるECチャネルでの販売は全体の4%程度に過ぎない[注5]

繰り返しになるが、この分野におけるFinTechベンチャーの活躍は日本のクレジットカード利用やEコマースの拡大へつながり、加えて(インターネットチャネルで商売をする事の多い)ベンチャー企業を含む中小事業者への助け舟となる可能性も高い。日本でも5年後の発展と貢献が大きく期待されるFinTech分野だ。

おことわり:本コラムの内容はすべて執筆者の個人的な見解であり、トムソン・ロイターの公式的な見解を示すものではありません。

[脚注・参考資料]
[注1]2015年7-9月、電子マネーの利用状況、総務省統計
[注2]2014年データ、株式会社フェアカード、市場の動向参照
[注3]中小企業庁調査
[注4]2015年7-9月、インターネットを利用した世帯当たり支出、総務省統計
[注5]2013年、電子商取引における市場調査、経済産業省

渡邊竜士(わたなべ・りゅうし)●トムソン・ロイター・マーケッツ執行役員。1972年、東京都生まれ、米国育ち。96年慶應義塾大学総合政策学部卒、同年野村證券入社。99年スイス野村バンク、2006年野村證券グローバルヘッジファンドセールスなど、主に国際部門にて経験を重ねる。12年野村インターナショナル(香港)のマネージング・ダイレクターを経て、14年よりトムソン・ロイター・マーケッツに入社して現職。トムソン・ロイターの経営企画や営業戦略等を担当している。
→トムソン・ロイター・ジャパン ViewPoint http://viewpoint.thomsonreutersjapan.jp/
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