では、過去20年にわたってメディアやビジネス界やヘッドハンティング会社がカリスマCEOに与えてきた人気は、幻想だったのだろうか。

4人の大統領のアドバイザーを務め、現在はハーバード大学ケネディ・スクール・オブ・ガバメントのパブリック・リーダーシップ・センター所長のデービッド・ガーゲンは、ビジネスの場合であれ、政治の場合であれ、カリスマ性というリーダーの資質を過小評価するのは危険だと言う。

「クレオパトラは決してあの時代の最高の美人ではなかったと言われている。だが、彼女には圧倒的な存在感があった。それこそが歴史を変えたのだ。存在感は、多くの分野のリーダーシップの質に大きな違いを生む。それをリーダーの資質から除外すべきではない」

そう語ったうえで彼は言う。「存在感は過大評価されてきたと言える」。

クリスピー・クリーム社(ノースカロライナ州)のCEO、スコット・A・ライベングッドは、別の見方を披露する。CEOの戦略は企業の業績に大きな影響を与えうるが、CEO個人の人格的特性は必ずしもさほど重要ではないと思わせる見方である。

「リーダーは、企業にとっての文脈と可能性を生み出すバリュー・ドライバーが何かを決断することに対して責任を負うべきだ」と彼は言う。

新しい要求昔ながらのスキル

過去2、3年のビジネス界の大きな痛手と現在の不安定な国際・国内環境によって、企業のリーダーには新たな要求が課されるようになってきた。

「今や時代は変わった」と、ヘッドハンティング会社、ハイドリック・アンド・ストラグルズの社長、ジョイ・A・グレガーは言う。「カリスマ的リーダーよりも、バランスの取れたリーダー、幅広いベースを持つトップが求められている。今日では、業務遂行のスキルを実証しなくてはいけないし、われわれもそれを見る。つまり過去の実績が重要なのだ」

現在、ランクの1番上にくるのは社内の助けを得ながら企業戦略を策定できる「基本的なリーダーシップ・スキル」と、その戦略を明確に表現する能力を備えた人物だと、グレガーは言う。

ドイツのコングロマリット、シーメンスのアメリカ本社のトップ、クラウス・クラインフェルトも、これと似通った実際的な見解を披露する。彼は、細かいスタイルの差はあるものの、効果的なリーダーシップの主な要素は昔からあまり変わっていないと言う。