2016年1月21日(木)

なぜハウス食品は、「CoCo壱番屋」という大きな買い物を決断できたのか?

意外と知らないオトナの教養「飲食業界」ABC【第11回】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
子安 大輔 こやす・だいすけ
カゲン取締役、飲食プロデューサー

子安 大輔1976年生まれ、神奈川県出身。99年東京大学経済学部を卒業後、博報堂入社。食品や飲料、金融などのマーケティング戦略立案に携わる。2003年に飲食業界に転身し、中村悌二氏と共同でカゲンを設立。飲食店や商業施設のプロデュースやコンサルティングを中心に、食に関する企画業務を広く手がけている。著書に、『「お通し」はなぜ必ず出るのか』『ラー油とハイボール』。株式会社カゲン http://www.kagen.biz/

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子安大輔=文
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「業界最大手が円満M&A」の驚き

もらい事故のような「廃棄カツ問題」で一躍注目を集めてしまった「CoCo壱番屋」ですが、運営企業である壱番屋は株式公開買付によって、昨年12月にハウス食品グループの子会社になっていたことはご存じでしょうか。このM&Aのニュースはネット上において、驚きと納得の両方の声をもって迎えられました。

驚きの理由のひとつは、食品メーカーがある程度規模感のある外食企業を買収するという意外性です。食品・飲料メーカーが外食企業を傘下に持つこと自体が珍しいわけではありません。銀座ライオンを運営するサッポロライオンは名前の通りサッポロビールグループですし、コーヒーチェーンのタリーズは伊藤園の子会社です。ただし、それらのケースと比べると、ハウス食品の連結売上2314億円に対して、年商440億円の壱番屋は「意外と大きい買い物」に見えます。

また好調な業績を維持して我が道を行っているように見えた壱番屋が「身売り」をしたというのも、意外に感じた人が多かったようです。実際、同社は売上高経常利益率が10%を超えていて、外食企業としては非常に優秀な経営状態が続いています。急いでどこかの企業の傘の下に入る必然性は感じられません。これも驚きに繋がった大きな理由でしょう。

一方で、当初から「納得」の声も多く存在しました。そもそも壱番屋にはすでにハウス食品からの資本が入っていましたし、さらにスパイスなどの食材で両社には取引があったためです。それに加えて壱番屋からすれば、創業家が築き上げたビジネスモデルをベースにしながらも、組織のガバナンスの長期的な安定を求めたことも想像に難くありません。

かたやハウス食品にとっては、今後海外展開をしていくうえで、「カレー体験」をしてもらうための装置として飲食店は最適です。まさに両社の思惑が合致したということなのでしょう。個人的には、「アジアを中心に海外でCoCo壱番屋が出店攻勢」→「日本式カレーのおいしさが評判となる」→「日本メーカーのカレールーが家庭に入り込む」という綺麗なストーリーが描かれることに期待したいと思います。

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