中国の「爆食」が、異次元化している

『牛肉資本主義』では、ここ十年余りの間に「牛肉」や「穀物」など「グローバルに売買され流通する食」に起きてきたことが、ここ数年で異様な変質を遂げ、いわば「異次元化」していることを、現場の徹底取材で明らかにしていく。

『牛肉資本主義』(井上恭介著・プレジデント社刊)

改革開放政策以来、長年言われてきた中国の「爆食」が、異次元化している。中国政府の指針で食の輸入が正式に解禁され、大手を振って国際市場で買えるようになったことと、世界の工場として外貨を稼いできた勢いがリーマンショックで失われ、食の世界への「転職」が一気に進んだことが、奇しくも機を一にして起き、すさまじい奔流となった。

「ショートプレート」という、大手チェーンの牛丼に使われる、脂身がおいしくて価格が手ごろな牛のばら肉の国際市場に突然異変が起きる。完璧ともいえるビジネスモデルを誇ってきた日本の商社が、中国向けに買い付ける業者に「買い負ける」という、今まで考えられなかった事態が起きていた。

長年中国が輸入の急拡大を進めてきた大豆では、さらに信じられない「異次元」で「爆」な事態が進んでいた。日本の国土の5倍もある南米ブラジルの草原地帯が、どんどん大豆畑に姿を変えていた。すさまじい量の大豆を作り、「大豆王」と呼ばれる農家が、世界の食を牛耳ってきた穀物メジャー相手に、価格交渉の主導権を握っていた。

その一方で、グリード(欲望)をむき出しにするグローバル資本主義は格差を増幅させ、競争に破れて、突然ホームレスに転落する人を増やす。ニューヨークの街角で、食糧配給を待つ人の長い列ができる。高い利回りを求め、市場に流れ込むマネーが食の相場をつりあげ、そうした貧困層が牛肉を食べる機会を奪っていく。

これまで見てきた現象の延長線上にあると思っていた事態が、いつのまにか「異次元化」している。その恐ろしさに身の毛がよだつ思いがするのは、私だけではないはずだ。

私たちの気づかない形で進行する現実を、目をそらさず、見ていただきたい。