費用以外の大切なポイント

介護付き老人ホームを選ぶうえでは、要介護度が近い人が集まっているかどうかもチェックポイントとなる。食事は入居者が食堂に集まって摂るし、入居者同士が接することも多い。介護度が低い人が、高い人の多い施設に入ると、精神的に落ち込んだり不満に感じたりすることが多いという。逆に介護度が近い人が集まる施設ならレクリエーションなどを通じて人間関係も築きやすいわけだ。

ホーム選びに見学はマストだが、それだけでは本当に合う施設かどうかわからない。入居者本人が体験入居し、施設の空気を体感してから決める手もあるが、それでも入居してみると問題が生じることがある。そんなときは契約から原則90日以内なら契約解除ができ、入居期間の月額利用料を除いて、入居一時金は全額返ってくるクーリングオフ制度がある。

有料老人ホームというと大手の名前が浮かぶが、実は75%がひとつのホームを経営する小規模法人で占められている。だから施設ごとに運営システムもさまざま。

「特色を知る目安としては定員があります。30床前後のところは家族的な雰囲気を大切にしています。50床以上になると対応が合理的で、必要以上に踏み込んできません。どちらが合うかは、その方の性格にも左右される微妙なものですから、そうした部分もチェックしたほうがいいでしょう」

もちろん信用を担保にできそうな大手を中心に探す手もある。介護にどう向き合うか、それぞれの企業ごとに特徴があるようだ。

ベネッセは階層別に5つのブランドを展開しており、自分のクラスに合った施設を探しやすい。セコムは警備会社という本業のノウハウを生かし富裕層のニーズに応える施設を展開している。アミーユは対照的に低価格で必要十分なサービスを提供。ニチイは医療系に強く、きめ細かな介護サービスに定評がある。有名大手なら安心と思いがちだが、評判のよろしくないところもあるので、ご注意を。

規模が大きいホームは別のメリットもある。「住宅型」の入居者で要介護度が高くなった場合、「介護付き」に移れるケースもある。

「人生の最後のときを過ごす場所ですから、大手も小規模法人運営の施設も実際に見学し、細かな部分も比較して、納得したうえで選んでいただきたいですね」