技術的にはあと3年で実用化

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ZMP社長 谷口恒氏の経歴

【田原】レベル4の無人運転は、もう技術的に可能なのですか。

【谷口】法律の問題で人が乗ってハンドルは握る必要がありますが、もうアクセルやブレーキは踏まなくていいというところまできています。ただ、一般道では難しいところがまだ多いですね。高速は真っすぐで何もないからいいのですが、一般道は道が狭く、人もどんどん飛び出してきます。とくに日本は道路が複雑です。たとえば渋谷の交差点は人がうじゃうじゃいるし、汐留は工事が多くてプロの運転手でも車線に迷います。ああいうところでは、まだ自動運転はできません。

【田原】一般道でできないなら、ロボットタクシーなんて無理じゃないですか?

【谷口】高速道路は日本で1割くらいしかないので、たしかにご指摘の通り、一般道で自動運転できなければみなさんの役に立てません。私たちはベンチャーなので、そこに挑戦しなければ意味がない。ですから、いま一般道で実験を重ねているところです。具体的にいうと、いま名古屋の守山というところで市街地のバス専用レーンを走らせています。次は、神奈川県藤沢市の公道。徐々に複雑なところで実験を重ねて、この町のここまで行けたか、事故は起こらなかったというレポートを政府に提出して、ドライバーがいなくても大丈夫だということを説得する計画です。

【田原】このままいくと、いつごろ実用化されますか?

【谷口】技術的には、あと3年です。それで2019年には国に承認してもらい、そこからロボットタクシーを3000台生産します。生産に半年かかったとしても、東京オリンピックには十分に間に合います。

【田原】3000台を一気につくるとしたら、大きな工場が必要ですね。半年でできるかな。

【谷口】工場を自社で持つのではなく、自動車整備工場のネットワーク化で対応するつもりです。ロボットタクシーは、ゼロから自動運転車をつくるのではなく、既存の自動車を買ってきて改造してつくります。改造技術があればいいので、整備工場と契約して、部品を納めてセットアップしてもらいます。

【田原】なるほど。もう一つ、気になるのは価格です。過疎地域に交通インフラとして定着させるには、運賃を安くしないといけません。低運賃を実現するには、ロボットカーのコストも下げないといけない。1台つくるのに、いくらかかりますか。

【谷口】いま自動運転車を1台約5000万円で販売していますが、3000台生産時は、本体を500万円で買ってきて、500万円で改造し、1台1000万円というところまで持っていきたいです。1000万円というと高く感じるかもしれませんが、従来のタクシーは車両だけでなく人件費がかかります。人件費が不要ということを考えれば1000万円は高くないし、そのぶんサービス料も安くできるでしょう。

田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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