「どの字でも最初は先生のお手本をまねます。なかなか字が字にならないものが、何十枚も繰り返し書くと字になってくる。その達成感がたまりません。段位が上がっていくのも快感ですね。最近は、漢字よりも難しい仮名文字や、濃淡を操る渇筆(墨汁の少ない筆を使って字をかすれさせる書法)に興味があります」

社長となった05年6月から、社長室には奥田さん直筆の“スローガン掛け軸”(池谷's EYE【H】)が飾られている。06年は「挑戦」、07年「飛躍」、08年「進化」、そして09年が「変革」。筆ならではの“はね・とめ・はらい”には活字にない味わいや勢いがある。毎年のスローガンは名刺サイズに縮小されて全社員に配られる。取材の際、スローガンの入った社員証ケースを社員たちが誇らしげに下げているのが印象的だった。

池谷'sEYE

【G】達成感はやる気を引き出す強力な「ごほうび」です。昇段の快感は、練習の苦労を忘れさせてくれます。

【H】スローガンには効果があります。いわば成功状態の疑似体験につながるからです。見慣れたとしても無意識の脳はいつでもきちんと見ています。例えば受験生の場合には「合格した」という貼り紙をしてもいいかもしれません。

(坂本政十賜、市来朋久=撮影)