相手の外見に無頓着、観察眼のない男たち

「男性が男性を見るときの基準は、自分より上か下か。初対面でもこの“好戦的”な態度を無意識に持っています。そのメカニズムを説明する前に、男性の同性に対する情報収集能力は、女性とは対照的で、相手をほとんど観察しません。恋愛に発展する可能性がない同性の外見に関心がないのはある意味自然かもしれませんが、会って話しているのに、相手がどんな色柄のスーツ、ネクタイかも、よく覚えていないことも珍しくない。男性が最も関心あるのは、自分。他人の髪形や爪がどうかなど、本当にどうでもいいのです」

男vs男の場合

では、どんな外見情報によって自分より上か下かを判定するのだろうか。五百田氏によれば、自分の関心事・得意ジャンルにおいて“張り合う”ことで、優劣を決める傾向がある。さらにその延長線上に、実は、「男の嫌いな男の外見」があるという。

「例えば、鞄や靴、時計……。自分がこだわっているアイテムに着目して、その格やスペック、新しさで瞬時に序列を決める傾向があります。自分の持ってるほうが高額だ、ハイスペックだ、新商品だ……。相手との共通の趣味がゴルフなら、所有するクラブのグレードを比較することもあります。そう考えると、男性が嫌いな同性の外見は、自分のとっておきの“武器”が通用しないスペックを持つ人ということになります」

いい歳をして、子どもっぽい。そんな指摘がありそうだが、男が「上下関係をつけたがる」のには理由がある、と五百田氏は語る。

「おそらく本能的な心理だと思われますが、多くの男性は特に同性に『ナメられたら終わり』と考えているのです。若い世代の人でも、ビジネスパーソンともなると、たとえ年齢は下でも、社内や取引先において、人から見下されることだけは回避したい。だから、自分の外見は最低限の清潔感があれば、それでよし。少しでも恰幅よく見えれば、なおよしくらいで、それよりも得意ジャンルのアイテムで武装するのです。新しいiPhone発売日の前から店頭に並ぶ人の多くが男性というのも、このことと無縁ではありません」

さらに男の外見チェックの偏りの理由には、もうひとつの心の問題もあるという。それは「男の価値は外見ではなく、内面にこそある」という意識。この場合の「内面」とは、ビジネスパーソンとしてのポテンシャル、例えば、仕事の実績であり、肩書であり、年収額のことである。

「名刺交換の瞬間は、大げさに言えば、“果たし状”の交換です。社名、肩書などで上下関係を決定づけたうえで、時計や靴などの小物勝負でだめ押しをするのです」(五百田氏)

逆に言えば、男の場合、ルックスや身長、服装など見た目がオシャレで自分は敗色濃厚という相手は好きにはなれないが、「名刺と小物」によって敗者復活できた瞬間に、嫌いなヤツもかわいい「配下」と見なすことができるのかもしれない。

五百田達成(いおた・たつなり)
作家・心理カウンセラー。『察しない男 説明しない女』シリーズが30万部を超えるベストセラーに。東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂を経て独立。「コミュニケーション心理」を主なテーマに執筆。「スッキリ!!」(日本テレビ系)レギュラーコメンテーター。
(飯田安国=写真)
【関連記事】
女に嫌われる話し方、男に嫌われる話し方
課長、部長になったらいくらのスーツを着るべきか
ファーストクラスに乗る人の"腕時計と靴"
服の色は相手の気持ちにどう影響するか
「印象がいい人」はなぜ生涯収入が4000万円も高いのか