2016年1月22日(金)

ふわふわに欣喜雀躍! 韓国の茶碗蒸し「ケランチム」

dancyu 2014年4月号

文・加藤ジャンプ 撮影・福尾美雪 教える人:コウ静子
「世界のたまご料理を食べに行きませんか?」。編集部からの1本の電話にときめいた。食っちゃ寝系ライター・加藤ジャンプは、何があろうと、巨人や大鵬がなくとも、卵焼きだけは確保したいタイプだ。その甘い誘いを聞いただけで、心は世界で一番優しい色、すなわち卵色に染まった。向かうは順にアメリカ、韓国、フランス、タイ、英国の5カ国。嗚呼もう我慢できない。卵が先か鶏が先かなんて謎も、もうどうでもいい!
さあスーツケース片手に「世界のふわとろ卵」の旅へ、出発!

ふわふわ卵の秘密は、混ぜる、混ぜる! ことにある

次に向かった先は、韓国。いただくのはケランチムである。ケランはハングルで鶏卵、チムは蒸すという意味なので、まさに韓国の茶碗蒸しである。

これ以上ないほどふわふわ感たっぷりの卵。だしとアミの旨味が、卵の柔らかさで繊細な味わいを奏でる。ケランチムがあれば、辛い料理を食べても口にするたびに優しくなれるコリアンマジック。飲んだ後にもお薦め。

韓国の茶碗蒸しである。「辛いのを食べたら、ケランチムを食べて一休みして、また辛いのに戻る。それを繰り返してゆっくり食事を楽しむんですよ」

コウ静子さんの言葉にハッとする。それは「ふわ辛の無限ループ」ではないか? しばし恍惚とする。

さて、いざ調理が始まると、だしの入ったトゥッペギ(韓国の土鍋)に入れるピンクのアミのつぶらな瞳にキュンとした。美味しいものはかわいいのだ、と勝手に再認識するやいなや、しっかりといた卵(これが大事)が投入され……あっと言う間の出来事だった。とき卵がだし、アミと渾然一体となり、出し抜けに膨らんだのだ。おぼろ月夜の雲が晴れ、いきなり満月が顔を出したかのようなきめ細かな黄身のふわふわに欣喜雀躍。しかも、ふわふわのそこかしこには小さな穴が開き、湯気がふうっと噴き出している。まるで卵温泉である(温泉卵ではない)。もう我慢ならん。スッカラでふわふわをすくい上げると、心の中に卵の満月が、優しくささやいた。「アンニョンハシムニカ」。こんなにほっこりするたまご料理、そうはない。

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加藤 ジャンプ