「商社不要論」を乗り越えた会社だけが生き残る

商社・卸売業の人事・給料の特徴について考えてみましょう。

商社・卸売業は、もともとはメーカーがつくった製品を小売業や飲食業に卸すことで、成り立っている業界でした。メーカーから見れば、無数にある小売業1件1件を開拓し、それぞれの店舗に製品を配送していたのでは、手間がかかります。そこで、小売業の開拓や配送、代金回収までを商社に依頼することで、自社は製品開発や製造に注力することができます。

一方、小売業から見ても、メーカー1件1件を探し、それぞれから仕入れるのは大変です。そこで、いくつものメーカーと取引のある商社に依頼すれば、欲しい商品が揃うので、店づくりや販売に注力できます。

以上のように、製造業、卸売業、小売業(飲食業)は、それぞれの得意分野を活かすことで、消費者に効率的に商品を提供することができました。

ところが、有力メーカーが自社内で商社機能を強化するようになり、有力小売業もメーカー機能をもつようになると、単に製造業と小売業をつなぐだけの卸売業は存在意義が問われることになります。いわゆる「商社不要論」です。加えて、近年インターネット販売が拡大してきたことも、卸売業の立場を厳しくする要因となります。

そのため、商社・卸売業も、さまざまな機能を強化するようになりました。一例をあげると、「メーカー機能」「小売業支援・コンサルティング機能」「物流機能」「商品開発機能」「商品のメンテナンス機能」などです。また、大手の総合商社は、国内外への積極的なM&Aや出資により、さまざまな業界への進出を図っています。たとえば、最大手である三菱商事の子会社・関連会社の中には、ローソン、ライフコーポレーション、伊藤ハム、横浜赤レンガ、レンタルのニッケンなど、バラエティに富んだ企業が名前を連ねています。

さらに、その三菱商事や三井物産を抑え、2016年3月期の連結純利益が業界トップになる見通しなのが伊藤忠商事です。資源価格が低迷する中、生活資材や機械など非資源分野にもバランスよく事業展開してきた成果が表れたかたちとなっています。

このように見てみると、時代に合せて役割変身できた企業のみが、「卸売り」だけではない新たな業種として生き残っていけるのでしょう。