フロントエンド・バックエンド――ITは最高のサービスを無料で提供

▼IT業界は「ユーザーの声をカネに換える」

儲かる仕組みの2つ目は「フロントエンド・バックエンド」だ。IT業界にはCGM(Consumer Generated Media)という言葉がある。「消費者が生み出すメディア」という意味だ。このコンセプトを活かしたサービスで利益を得ている企業は山ほどある(表を参照)。

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「消費者が生み出すメディア」で儲けるITサービス

おなじみのフェイスブックやツイッター、ユーチューブなど、「無料」のネットサービスはもはや現代人に不可欠なツール。税理士でIT業界に詳しい藤原実氏は次のように語る。

「とても便利で、しかも基本的に無料となれば、ユーザーはどんどん増え、それに比例して投稿や書き込みも膨大なものになります。面白い情報、役に立つ情報が集まれば集まるほど、さらにユーザーがやってきます。このように高品質の投稿などが勝手に集まり、ポジティブなフィードバックが集積することでサイトは強化され、訪問者の加速度的な増加につながります」

無論、IT企業も無料で提供するだけではない。利潤追求に積極的だ。ネット上で大勢の訪問者が来るという「立地」のよさを活かして、他の企業に広告を出稿してもらったり、集積したデータをもとに企業にマーケティングデータを提供したりすることで大きな報酬を得ているのだ。

IT企業はより多くの広告を出稿してもらうため、例えば、ユーザーにサイト内のあちらこちらを“回遊”して滞在時間を長くしてもらえるようコンテンツを充実させ、媒体としての価値を高めているという。

いわゆる、まとめサイトはその典型的な例だ。「NAVERまとめ」はそのとき話題になっているネット上のニュースやコラムなどをまとめるサービス。話題になっている内容やテーマに関心がある読者は、じっくり閲覧するから滞在時間が長くなる。しかも、この「まとめ」という作業を運営者側がするのではなく、ユーザーに作ってもらう(まとめ記事に人気が出ると作成者にインセンティブを与える仕組み)というから、なんとも賢いではないか。余計なコストをかけずに、儲ける仕組みを巧みに構築しているのだ。