人間関係を備えるということは現実には難しいですが、日頃から、寄り添い合う関係とはどういうものか、考えておくべきだと思います。

最後に、がんは長く付き合う病気であり、金銭的な備えも重要になります。さまざまな治療法の選択肢があり、保険のきかない高額な治療もあります。お金の話は避けて通れません。

2010年に愛媛県で実施した「がん患者満足度調査」では、回答してくださった入院患者さんの約3割が、経済的な理由で治療の継続が危ぶまれているという結果が出ました。

金の切れ目が命の切れ目、悲しいことですが、現実に起こりうることなのです。

がんの治療は、年々、治療スタイルが様変わりしています。入院期間は短縮され、抗がん剤や放射線治療も通院でする場合が増えています。民間の保険に加入されている方も、現在の治療形態にあっているかどうか保障内容を見直すべきでしょう。

それと、民間療法。ほかに治療法がないといわれ、藁にもすがる思いで民間療法に走る人もいます。しかし、大半は効果が不確かなうえ、費用が高額になる場合もあります。本当に必要なのかどうかよく考えてほしいです。

患者、または家族にとって、体験者のアドバイスが頼りになることもあります。全国にはがんの患者・家族会があります。医療機関や地域の保健所などで紹介してもらい、活動内容や目的などを確認したうえで参加してみることをお勧めします。同じ経験をした仲間と話すだけでも、心が軽くなることもあります。

元気なうちから病気になることを想定するのは、楽しくありません。でも、がんはもはや、珍しい病気ではないのです。がんは治す時代から、備える時代になりました。その備えが、いざというときにわずかでも心に余裕をつくってくれるはずです。