施設職員のキャリアを評価する加算設定

サービス体制が強化された施設を利用した際の加算額の例<br>
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サービス体制が強化された施設を利用した際の加算額の例

2009年4月から介護保険サービスの公定価格である介護報酬が改定された。全体で3%アップとなったが、すべてのサービスが値上げされたわけではない。10%程度上がったサービスもあれば、以前と変わらないもの、逆に下がったものもある。

今改定で特徴的なのは、各サービスにさまざまな加算が設定された点だろう。加算とは、サービスを利用したときにかかる「基本費用」に、上乗せして請求されるもの。希望に応じて利用する特別なサービスや、事業所(介護施設も含む)の体制などに応じてかかる費用だ。

その一つが「サービス提供体制強化加算」。介護福祉士などの有資格者や常勤職員、3年以上の勤続経験者が一定割合いる事業所を利用した場合に加算される。例えば、訪問入浴を利用した場合、同加算の付く事業所を利用すると付かない事業所と比べ、1回あたり自己負担は24円高くなる。

つまり、同じサービスを利用しても、事業所によって介護費用に違いが出るということ。これは資格保持者や職員のキャリアを評価するもので、その割合が高い事業所を利用すると自己負担も高くなるというわけだ。同様の加算は以前から訪問介護にもあり(特定事業所加算)、介護費用が1~2割高くなっている。

ただ、在宅の介護サービス利用者の中には、認定ランクごとに決められた限度額(上限額)を目いっぱい利用している人もいる。その場合は加算が付く事業所を利用すると、限度額をオーバーしてしまうこともありうる。その分は全額自費(10割負担)となってしまうため、家庭の経済事情によってはサービスの利用を減らすか、もしくは加算が付かない事業所に変更せざるをえないかもしれない。

そのため事業所の中には要件を満たしていても、あえて同加算を請求しないところもある。自己負担の上昇でサービスの利用が抑制されたり、ほかの事業所に客をとられては困ると考えるところもあるからだ。

一方、同じ加算でも介護施設に入居する場合は事情が少し異なる。加算対象の施設を利用すると自己負担もそれに応じて上がる点は同じだが、介護施設には「限度額」という歯止めがないので、それを超えるかどうかを気にする必要はない。施設側にとっては加算をとりやすいということでもある。

今改定ではほかにも、一定の認知症ケアの経験や専門研修を受けた職員を配置した介護施設や認知症高齢者グループホームで「認知症専門ケア加算」が付くようになった。

いずれにせよ事業所を選ぶ場合に、利用者は加算が付くかどうかを参考指標の一つにできる。どの事業所が加算対象となるかは、最寄りの地域包括支援センターやケアマネジャーに相談するとよいだろう。

なかでも地域包括支援センターは、介護や医療などで困ったときに相談できる身近な公的窓口として覚えておきたい。介護保険の使い方や各種補助制度、地域の事業所などの情報が得られるだけでなく、要介護認定の申請手続きも代行してもらえる。

住まいの地域ごとに担当センターが決まっているので、市町村の介護保険担当窓口に連絡先を聞き、いざというときに利用できるようにしておきたい。離れて暮らす親がいる場合は、帰省時に一度訪問しておくと、相談しやすくなるはずだ。

※すべて雑誌掲載当時