ゴールまでの距離がわからないマラソン

塾講師たちは、志望校合格のために子供たちを鍛えようとする。また、志望校合格のためにどれだけの努力をしなければいけないのかを知っている。しかし塾に入ったばかりの小学生には、これから自分が何をしなければいけないのか、さっぱり見当がついていない。

「自分の志望校は○○中学で、そこに合格するためにはこれくらいの学力が必要だけれど、現在の自分の学力はこの程度だから、残りの3年間で毎日これだけの努力をしなければならない」などと冷静に分析ができる小学生など当然皆無。

小学生にとって受験勉強とは、「ゴールまでの距離がわからないマラソン」を走っているようなもの。それが大学受験や高校受験と大きく異なる部分である。

想像してみてほしい。「あなたにはこれから3年間、毎日走ってもらいます。しかしゴールまでの距離はわからない。とにかくずっと遠くです。でもとりあえず走り続けてください」と言われて走り出しても、毎日どれくらい走らなければいけないのかもわからないだろう。

そんな状態で、しかも小学生に、「とにかく自分で考えて走り続けなさい」と言うことはほとんど拷問だ。「何かをしなければいけないプレッシャーをひしひしと感じながら、でも具体的に何をしていいのかが明確になっていない」というのは、人間にとって最もつらい状態である。

そこで、現在地からゴールまでの距離と方角を知っていて、期限までの日数で毎日走るべき距離を割り出し、ペース配分を考えてくれる「コーチ」が必要となる。それが中学受験塾の役割だ。