今、国が最重要課題の一つに位置づけているテーマが、地方創生である。日本の人口減少や過疎化はもう後がない。そんな危機感のもと、政府は人口減少等を克服するための五カ年計画として「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と、2060年にも人口1億人を維持する長期ビジョンを策定。地方の人口や六次産業化率、訪日外国人数などのさまざまな数値目標を設定し、同時に全国の都道府県や市町村に対してもこの総合戦略を踏まえた「地方版総合戦略」の15年度中の策定を求めている。

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内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の発表資料より作成

今年10月末時点の集計では、約8割にあたる38都道府県が策定を終えている。12月までにはさらに5県が追加され、全体の9割が戦略を定める見込み。16年は、まさに「地方の戦略」が本格化する年となりそうだ。

人とお金の流れを読み地域に稼ぐ力を生む

地方版総合戦略が示すべきは「5年後にはあらゆる問題を克服する」という楽観的な見通しではなく、どれだけ人口や雇用などの状況を改善し、いかに将来への筋道を付けるかという点に尽きる。その成果を測るためには、目標を数値化して検証できる体制をつくっておく必要があるだろう。

となると、当然、データ活用のスキルが求められるが、地方自治体によってそのレベルや習熟度は異なる。たとえやる気があっても比較的小さな自治体は、人員配置や予算に限界がある。そこで国は地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」(内閣官房および経済産業省が提供)の活用を提案している。

RESASは、地方経済に関わるさまざまなデータを収集・分析し、分かりやすい形で提供するシステムのことだ。統計資料や企業データベースなどを用いて、地方経済に関する情報を「産業」「農林水産業」「観光」「人口」「自治体比較」の5分類で分析する。

例えば、訪日外国人がどんなルートで移動しているのか、輸出が盛んなエリアや品目は何か、農地流動化が進んでいる地域はどこなのか……などの詳細が、日本地図上に描画される。俯瞰的な目線で「人・モノ・カネ」の流れを把握でき、まさに「日本経済のビッグデータ」を活用するためのツールといえるだろう。

では、これらのデータをどう生かしていくのか。地域の経済力を付けるには「域外からお金を稼ぐ産業」をいかに育て、集積していくかが問われる。一つの地域だけを見れば、長年にわたる基幹産業が衰えているように見えるかもしれない。しかし近隣エリアにまで視野を広げれば、外部要因の変化に伴って生産拠点が増え、新たな産業が生まれている可能性もある。そうなればサプライチェーンの構築や販路拡大などで連携していくことも可能だろう。

データから戦略を練り、現場に出向き新たな可能性を形にしていく──これはまさにビジネスの戦略立案とも共通する。事実、地域版総合戦略の策定においては、自治体だけではなく地元金融機関や企業、大学などとの連携が求められている。また、RESASは企業間取引のメニューを除いて一般にも公開されており、ビジネスでの活用も期待できる。

データを使って、歴史や自然風土といった地方の持ち味を生かした産業を生み出す。そんな戦略立案をやり遂げた地方が、2016年の日本を引っ張る存在になる。