千載一遇のチャンス

――日本人には不利ですか?

【倉本】丸山や片山(晋呉)、谷口(徹)、藤田(寛之)ら体の小さい選手はテクニックを磨いて戦ってきましたが、日本では通用しても、海外ではがぜん不利です。なぜなら小さい選手は長いクラブを持てば横振りになります。それでは飛距離も方向性も劣ります。飛ばない分、アプローチやパットに神経を使えば、プレッシャーも大きく疲れます。藍(宮里藍)や美香(宮里美香)も頑張っていますが、いかんせん体が小さい。このままではいつになっても世界に通用する選手が出てきません。

(左)女子世界ランキングで日本人トップ(38位)の大山志保プロ(2015.10.12時点)。(写真=日刊スポーツ/AFLO)(右)男子世界ランキングで日本人トップは松山英樹プロ(15位)。岩田寛プロ(85位)が続く(2015.10.11時点)。(写真=読売新聞/AFLO)
――体格を考えて選手を育成しなければだめですね。

【倉本】今のプロを見ても、ナショナルチーム(JGAのアマチュア強化チーム)を見ても大きい選手はあまりいない。アフター・タイガーの備えを怠ったからです。まずは将来プロを目指すナショナルチームのメンバーは身長が180センチ以上なくてはダメです。それもゴルフ一筋ではなく、高校ぐらいまで野球やバスケットなど他のスポーツを併用した体格も身体能力もある選手を見つけ、英才教育をする必要があります。我々はそこから手掛けていきたいと考えています。

――リオ五輪と東京五輪がゴルフ界の起爆剤になりそうですね。

【倉本】そうです。これは低迷するゴルフを再生させる千載一遇のチャンスです。船は帆をかけなければ動かない。今までは誰も帆をかけなかった。これからはゴルフ界が一丸となって船を動かさなければなりません。オリンピックはそのいいきっかけです。できればメダルを取って、日本中を沸かせたい。そうなれば何かが変わります。

――あなたは歯に衣着せずものを言い、ある意味有言実行タイプ。周囲からの抵抗はありませんか。

【倉本】高齢化やゴルフ離れでこのままいけばゴルフ場もゴルファーも減少の一途を辿ります。ゴルフ界が生き延びるためには、綺麗ごとや、おざなりなことは言っていられません。私が嫌われてもゴルフ界がよくなればいいのです。だからこれからも遠慮はしません。

日本プロゴルフ協会会長 倉本昌弘
1955年、広島県生まれ。81年プロテスト合格。82年全英オープン4位(日本人選手歴代最高)、日本プロ初出場優勝。2003年アコムインターナショナル優勝、通算30勝。06年から08年まで米シニア「チャンピオンズ・ツアー」に参戦。10年日本シニアオープン優勝、同年シニアツアー賞金王。14年2月より現役選手として日本プロゴルフ協会会長。
(宮崎紘一=取材・構成 岩井康博=撮影、AFLO、日刊スポーツ/AFLO、読売新聞/AFLO=写真)
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