「人と企業の国際化の推進」を理念に掲げる、一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が実施・運営しているTOEIC(R)テストの出題形式が、2016年5月29日の公開テストから一部変更される。変更の背景と内容について、TOEIC(R)プログラムの開発機関であるEducational Testing Service(ETS:米国ニュージャージー州プリンストン)のテスト開発責任者、フィリップ・エヴァソン氏に話を聞いた。

フィリップ・エヴァソン
Philip Everson, Ph.D.
Executive Director
English Language Learning
Assessment Development

各種試験の開発機関であるEducational Testing Service(ETS)に所属。TOEICテスト、TOEIC(R) S&W、TOEIC Bridge(R)からなるTOEICプログラムの開発・制作部門の責任者を務める。

 

時代に即した形式へ出題の一部を変更

英語を母国語としない人たちを対象に、日常生活やビジネスシーンにおける英語によるコミュニケーション能力を測るテストとして、1979年にスタートしたTOEICテスト。世界約150カ国、約700万人が受験する世界共通のテストだ。日本ではグローバル化がますます加速する時代の流れを受け、2014年度には公開テストと団体特別受験制度を合わせて240万人と、過去最多の受験者数を記録した。

そのTOEICテストの出題形式が、2016年5月29日の公開テストより、一部変更されることになった。2006年以来の変更である。

「近年、新たな通信手段の普及に伴い、英語の使い方や使われる環境は大きく変化してきています。テスト問題もそうした変化に合わせて、改訂を加えていく必要があります。そこで、今日使われている英語を反映し、受験者の皆さんが必要とする英語スキルを確実に測定するテストであり続けるため、TOEICのテスト形式の一部を変更することにしました」

変更に至る背景についてこう説明するのは、TOEICプログラムの開発機関であるETSのエグゼクティブディレクター、フィリップ・エヴァソン氏だ。

彼が所属するETSは、世界中の人々の教育の質と公平・公正性の向上を基本理念に設立された米国の非営利組織だ。3300人以上の従業員のうち、2300人以上が教育学や心理学、統計学、コンピューターサイエンス、社会学、人文科学などの分野において、トレーニングを受けた専門性の高いスタッフで構成される専門家集団だ。

ETSでは厳密な調査をもとに、学力・能力を測る各種試験を開発し、世界180カ国以上、年間5000万件以上のテスト実施、採点を行っている。TOEICテスト以外に、TOEFLテスト、GREテスト(大学院、ビジネススクール入学希望者対象)などもこの中に含まれている。

エヴァソン氏は、このETSにおいてTOEICプログラムの開発・制作部門の責任者を務める重鎮である。

「今回の変更に際して、私どもがいちばん重要視したことはスコアの一貫性(consistency)です。出題形式の一部が変わっても、TOEICテストの信頼の核となるスコアのもつ意味は普遍的で、変更前後で変わらないように、調査を繰り返し実施し、検証を重ねた上で変更に踏み切りました。また、試験問題のクオリティや難易度、テストの実施時間などにも変更はありません。従って、スコアの意味は現行のTOEICテストと同等であり、変更後のスコアも問題なく比較することができます」