原発立地周辺地域への利益還元が重要

「原発銀座」と呼ばれる福井県の嶺南地域には、4つの市町村に5カ所の原子力発電所が立地している。立地にともなう助成金は電源三法交付金などの形で地元自治体に支給されるが、例えば、立地市町村である敦賀市に対する交付金は、98~99年度には18億円から5億円へ、06~07年度には40億円から16億円へ、それぞれ減額された。

同じく立地市町村である高浜町でも01年度の14億円から02年度の9億円へ、大飯(おおい)町でも93年度の24億円から96年度の3000万円へ、電源三法交付金等が削減されたことがある。このような事態が生じると、原発立地市町村の財政基盤は、不安定化せざるをえない。これが、(1)として指摘した、電気事業者の設備投資の変動にともない地元への助成額が変動するという問題である。

一方、制度が始まった74年度から07年度までの電源三法交付金等交付実績の累積額をみると、福井県嶺南地域の原発立地市町村へ1007億円、嶺南地域の原発非立地市町村へ174億円、嶺南地域以外の市町村(いずれも原発非立地)へ128億円(福井県へは別に1504億円)となり、かなり偏りがあることがわかる。これが、(2)として指摘した、原発非立地周辺市町村への助成額の不十分性という問題である。

福井県全体では、原子力発電の運転により日本全体のCO2排出量を3~4%程度削減していると推測されるが、その貢献分が新たに、原発立地市町村のみならず周辺非立地市町村まで含めて利益還元されれば、(1)や(2)の問題は解決に向かう。そうなれば、社会的リスクは軽減され、原子力発電所の新増設と利用率向上への道が広がるであろう。

繰り返しになるが、日本においては、原子力発電の拡充なくして低炭素社会の到来はありえない。再生可能エネルギーによる発電がゼロ・エミッション電源の主役になりうるのは、早くても21世紀半ばのことである。それまでは、原子力発電が低炭素社会実現へ向けた「絶対的エース」なのであり、本稿で取り上げた2つの方策を講じて、早急に原子力発電所の新増設と利用率向上を実現する必要がある。

(平良 徹=図版作成)