例年5月に短答式、8月に論文式の試験が行われる公認会計士試験。昨年11月に発表された2009年試験の合格者は前年比38.5%減の2229人に急減した。

この合格者抑制の方針を打ち出したのは、金融庁が招集している「公認会計士制度に関する懇談会」だ。その会では大学卒業を受験の要件にする案も出てきているという。

公認会計士の合格者を合格率の推移で見ていくと、06年まではおおよそ7~8%で推移してきた。ところが、07年と08年には合格率が大きく上がり、14.8%、15.3%と倍程度に増えている。同じ資格試験でこれほど変わる点については、「会計士の質の維持や環境整備なども踏まえた計画性に欠ける点もあるのでは?」という思いを抱かずにはいられない。

しかし、意味なく合格率を上げたわけではない。理由はある。06年6月に「金融商品取引法」(J-SOX法)が成立したことが関係しているのだ。

J-SOX法は従前の証券取引法をベースに新法として改正され、内部統制と四半期決算の公表を義務付けた。そのために監査法人はもちろん、企業でも財務会計に強い人材が求められ、公認会計士の需要が高まると考えられたのだ。いうなれば“J-SOX法特需”である。

しかしJ-SOX法特需で合格率が上がったのはたったの2年であり、長くは続かなかった。これには、リーマン・ショックが影響していると考えられる。景気低迷により、企業では有資格者の採用が伸びず、監査法人でも採用が減っているのだ。

昨今の激変する経済環境に適応すべく、専門知識を持つ会計職業人を増やそうと、02年の中央大学を皮切りに、全国で「会計大学院」が開設された。会計大学院とは、公認会計士や税理士、企業の財務担当者など、会計分野のプロの育成を目的とする専門職大学院。修了すると、公認会計士試験では財務会計論、管理会計論、監査論の3科目が免除される。

しかし当初想定していたほど監査法人での採用が進まず、結果的には毎年、数百人単位で就職できない合格者が出ているのが現状である。

急増する公認会計士試験の合格者
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急増する公認会計士試験の合格者

大手監査法人4社(トーマツ、新日本、あずさ、あらた)の今年の採用人数は約1090人で、昨年に比べて半減の見込み。業績の悪化による影響のほか、内部統制や四半期決算への対応が一巡したことも要因とされる。

ちなみに監査法人での年収(申告所得)は、大手でも初年度500万円程度とみられる。以前、私が働いていたときの記憶による個人的な感覚だが、会計監査の報酬は、規模が大きくない監査対象企業や未公開企業なら「4人くらいのチーム編成で1年監査すると500万円前後」で、高くても1000万円程度だろう。有価証券報告書には「監査証明業務に基づく報酬」という項目で記載されている。

15年には国際会計基準(IFRS)が適用される見込みである。たとえば日本では出荷日に売り上げ計上している現状のルールが見直され、相手が受け取って、内容の確認を済ませてから計上するなど、さまざまなルール変更が見込まれる。そうなると、会計システムやプログラムの変更を余儀なくされる。

また、それに伴い会計のプロである公認会計士の知識が必要不可欠となる。そこで新たな“IFRS特需”が起きるはず。本来なら、各監査法人も人材確保を含めた準備を始めてもいいはずだが、時期が近づかなければ動き出さない。景気がよくならなければ採用は増えない、というのは、どの業界でも同じだ。

ということで、難関を突破して資格を取得しながら就職に至っていない方には、IFRSを研究して特需を待つことをお勧めしたい。努力を怠らなければ、必ずや活躍の場がある。