「特別養護老人ホームなどの介護保険施設は国から施設への補助金や、収入による減額制度があって相対的に費用が安いですが、ものすごく人気が高い。200人、300人待ちは普通で、『死んでからじゃないと入居できない』なんてジョークが囁かれるほど。地域密着型は、小規模で地域密着を謳っているがゆえに遠方から客を取ってくることができず、ほとんどの施設が赤字です。

有料老人ホームは民間の経営ですが、かつては入居一時金があまりにも高かった。平成24年4月以降の新設施設では入居一時金は禁止されましたが、その分がすべて月額費用に上乗せされることになりました。だから、月額費用が100万円を超えるような施設がざらにあるのです」

一方で、月額費用が20万円を切る施設もあるようだが、サービスの中身は大丈夫なのだろうか。

「20万円を下回るような施設は、当然、サービスの質は下がるでしょう。格安の施設で入浴中の溺死事故が何件か起きていますが、介護の訓練を受けた人間からすれば絶対に考えられない事故です。まさに、命と引き換えの世界ですよ」

介護保険施設は死ぬまで順番待ち、地域密着型は経営難、有料老人ホームは金次第となれば、どこへ行くのがベターなのだろうか。

「入居施設で最も期待を集めているのは、サービス付き高齢者向け住宅です。これは、普通のマンションの1階部分にデイサービスとわれわれのような訪問介護の事業所が入り、ケアマネジャーがいるというスタイルの施設です。階下に下りればデイサービスがあるし、われわれにすればお客様が上の階に集住していることになり、業者にとっても利便性が高い。だから、費用を圧縮できる可能性が高いのです」

自宅で介護サービスを受ける場合は、どの程度の費用を見込めばいいのだろう。

「たとえば要介護5(最も重い)の場合、月額35万8300円まで介護サービスを使えますが、本人負担は1割なので、めいっぱい使っても3万5000円どまり。おむつ代を含めても、月額費用が5万円を超えることはまずありません。弊社のお客様で5万円を超える方は、2%に過ぎません」

次回から、事例を見ながら本当に月額5万円で十分な介護サービスを受けられるのかを検証してみよう。

(小倉和徳=撮影)
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