こうしたことが、すみやかに実行されるところがソフトバンクの強みなのだろう。また、ミーティングが延々と続きながらも、めざすべき方向性が一向に定まらないときもある、そんなとき、孫は散会を促す決めゼリフを発動する。

「よし、見えてきたな!」だ。

三木は孫と過ごした参謀の時代を、こう振り返る。

「一時期は家族と一緒にいる時間より、孫さんと過ごしているほうが圧倒的に長かったのです。毎日、朝の7時半から夜の12時過ぎまで……。でも、そのおかげで会社の成長フェーズに合わせて自分も変われることができ、とてもラッキーでした」

(敬称略)

孫正義から現役参謀へ「さすが嶋さん!」2人のときの褒め言葉
ソフトバンク顧問、元社長室長 嶋 聡氏

代議士から社長室長へと転身した嶋聡は、孫正義に叱られたことがないという。それどころか、2人きりになったときには、たびたび「さすが!」と褒められたそうだ。とりわけ印象に残っているのが、2012年ソフトバンクにプラチナバンド(900MHz帯の周波数帯)割り当てが決まったとき。嶋による政権幹部への交渉が決め手になった。孫は、「さすが嶋さん。今回は本当に感謝しています」とねぎらったという。
松下政経塾の2期生だった嶋は、高齢ながらも元気だった頃の松下幸之助の薫陶を受けたことがある。あるとき塾生が「成功する秘訣は?」と問うたところ、幸之助塾長はこう答えた。成功のコツ。それはな、成功するまでやめんこっちゃ──。「当時、傍で聞いていた私は、なあんだと思いましたが、孫社長と仕事をするうち、この言葉の重みがわかるようになりました」
ソフトバンク元社長室長 三木雄信
1972年、福岡県生まれ。東京大学経済学部卒業後、入社した三菱地所で丸の内活性化プロジェクトを企画して成功に導く。98年ソフトバンクに入社、2000年より社長室長に。06年、ジャパン・フラッグシップ・プロジェクトを設立。13年より、内閣府原子力災害対策本部で廃炉・汚染水対策チームのプロジェクトマネジメント・アドバイザーも務める。『孫正義「 リスク」を「成功」に変える28のルール』など著書多数。
(小倉和徳(孫正義氏)、遠藤素子=撮影)
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