私の経営する会計事務所グループに、実は3つのホームページがある。それぞれ、30万円程度の投資をして、2~3年ほど前に立ち上げた無形の資産だ。今IT関連では、このうち1つのホームページだけで、2000万円近くの売り上げを挙げるようになった。しかし、メーンの1つを除いて、残り2つはほぼ遊休状態となってしまった。このままでは今後、キャッシュフローが見込めないので、近々、閉鎖することも考えている。

このように、複数の投資をした結果、一部が初期の投資額を回収できないケースは、有形・無形の投資を問わずよく見かける。もはや将来の収入が期待できない場合に、資産を初期の投資額のまま評価し続けることに問題はないだろうか。このような疑問に答える形で登場したのが、「減損会計」という会計技術である。

そもそも「減損」とは、企業が投下した設備投資などで、収益性が低下したために当初期待していたリターンを見込めなくなった状態をいう。このような減損状態にある設備などについて、固定資産の評価を切り下げる会計上の処理を減損会計というのである。

固定資産の減損に係る会計基準が公表されたのは、2002年8月である。この頃までの時代背景として、バブル崩壊後の長引く不況で、事業用投資の収益性の低下が、どの会社でも大きな問題となっていた。じっさい、新規設備投資に踏み切ったところまではよかったが、その後計画が頓挫して、稼働していない設備をかかえるなど、あきらかに過大評価となっていたバランスシート上の固定資産を、適正な金額まで評価減するべきである、という指摘があった。

また、企業の実力を判断するうえで重要な財務分析指標にROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)などがある。この算定基礎となる資産の評価額を実態に合わせて正しく修正するために、固定資産の減損処理の導入は、必要不可欠であったといえる。

そのような状況下、05年以降本格導入された減損会計によって、企業の決算発表は大きく影響を受けるようになった。

最近の例として、新生銀行のケースを見てみよう。同社では、07年3月期の決算に、当初予想では400億円の黒字を見込んでいたのが、一転して609億円の赤字となった。1000億円以上の業績下方修正である。一見するとかなりすごい変動であるが、下方修正の中身を見ると、減損会計の影響が垣間見られる。

新生銀行は、もともと破綻した日本長期信用銀行を投資ファンドが買収した銀行である。特徴としては、投資銀行業務と連結子会社が手がけるノンバンク(アプラス、昭和リースなど)が収益の柱である点が挙げられる。今回は、その収益の柱であるはずのアプラスが、業績の足を引っ張る原因となった。背景には、アプラスが属する消費者金融業界を取り巻く環境の急激な悪化がある。

このような厳しい経営環境下にあって、新生銀行の連結決算に含められるアプラスの「のれん」や「無形資産」といった、ブランド価値等の経営資源の収益性が著しく減少してしまったのである。じっさい、図にも示したように、新生銀行のバランスシートを見ると、のれんのうち610億円、無形資産のうち400億円が減損処理の対象となって減少し、事前の業績予測で見込まれていた400億円の最終黒字をすべて吹き飛ばすと同時に、純資産を大きく減少させたことになる。

このインパクトは、相当なものだ。減損損失1010億円の影響力は、減損会計適用前の純資産(1兆342億円)に対し、10%近くにも及ぶのであるから、企業決算において、減損会計の動向に注意することがいかに重要であるかがわかるのである。