インターネット政党はあり得るのか

【塩田】政党政治が大衆迎合主義に陥るのでは、という点を懸念する人もいます。

【松田】ポピュリズムみたいなことはあり得ると思いますが、ネットの会員数が増えれば増えるほど、そのリスクが減ると思います。また、政治家が意見の違う人たちに対抗できるように、一人一人が信念を持って議論をできるようになればそうはなりません。

【塩田】一方で、それなら代議制民主主義は不要では、という議論も出てくるのでは。

【松田】それはまったくありません。国会議員は自分が信じる政策や法案をわかりやすく国民に説明する能力が必要とされます。その前に理解する能力が必要ですね。実は、既存政党の国会議員は党議拘束があって自分で判断しなくてすみますから、法案を理解しない人が多いですよ、本当に。そういうこともあり、われわれは結党以来、まず参議院の党議拘束をなくしたいと言ってきました。

【塩田】一方で、インターネット選挙の解禁をずっと主張していますね。

【松田】実はそれは全部つながっているんです。出馬したときから、民主主義国家で選挙期間中、インターネットが使えないとは、どういう国だろう、と仰天しました。こんなことはあり得ないと思って、インターネットの解禁を公約の一つにしたのです。当選後、議員立法でやっと解禁まで持っていったんです。私はさらにこの先、なんとかインターネット投票を実現したいと思っています。

【塩田】ヨーロッパにはインターネット政党というのがあり、最初に著作権上の海賊行為の解禁を唱えたことから「海賊党」と呼ばれていますが、政府のインターネットへの規制に反対するところから出発した海賊党をどう見ていますか。

【松田】ドイツで国政選挙に打って出て、一時期は支持率13%で第3位になるなど、すごく勢いがありましたが、今は弱くなっています。期待がしぼんだ理由は、一つは国政政党になれなかったこと、もう一つは主要政策がすべて丸投げだったことです。もしかしたら、政策も法案も真逆のものが可決されるかもしれない。国民からすると不安だと思います。ですが、海賊党は、インターネット政党があり得るというその可能性を打ち出した点は歴史的な意義があると思います。

実は国政政党としてその仕組みを入れているのはわれわれが世界初です。今後、われわれが議員50人規模になり、100 万人くらいの会員を確保すれば、重要な意味を持ちます。「ミニチュア国民投票」を頻繁にやる形になる。世論調査はせいぜい1000~2000人の調査です。もしわれわれが100 万人規模の会員を持てば、大きなムーブメントになると思います。

【塩田】100 万人というのはネット会員みたいなものでしょう。それは党員ですか。

【松田】党員です。われわれの場合は無料で、しかも他党の党員でもいいと言っています。自民党は党規約に重複入党禁止を書いてありますので、まじめにやるのであれば、ダメでしょう。ですが、ネットですから、名前も本名が出るわけではありません。

松田公太(まつだ・こうた)
参議院議員・日本を元気にする会代表
1968年12月、母の故郷、宮城県塩竃市で生まれる(現在、46歳)。水産会社勤務の父親の転勤で5歳のときにアフリカのセネガルに渡り、10歳で帰国。翌年から高校まで、アメリカのマサチューセッツ州レキシントンで過ごし、86年に筑波大学国際関係学類に入学。卒業後、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。95年に友人の結婚式でボストンに出かけたとき、スペシャルティコーヒーと出合う。96年に三和銀行退社。97年にタリーズコーヒーと独占契約し、東京・銀座に1号店を開店。98年にタリーズコーヒージャパンを設立して社長に就任。2006年に伊藤園に株式を売却し、07年に社長退任。10年の参院選にみんなの党の公認で東京選挙区から当選。14年にみんなの党の解党で無所属に。その後、参議院の会派「日本を元気にする会」を結成し、15年に新党「日本を元気にする会」を結党して代表兼幹事長に就任。著書は『すべては一杯のコーヒーから』『仕事は5年でやめなさい。』など。
(尾崎三朗=撮影)
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