なぜ、川淵三郎はリカバリーショットが上手いのか

欲をかいている自分を脅し上げるのが効果的

そこで、またまた尋ねた。

「欲をなくすのは無理でも、欲心を減少させる効果的な方法はありませんか？」

答えは明快である。

「僕はこうやっている。口に出して、欲をかいている自分を脅し上げる。

『いいか、川淵、ここで飛ばそうと思って打ったら必ずひどい目に遭うぞ。死ぬほどひどい目に遭うからやめておけ。スイングするだけにしておけ』」

川淵さんも欲をなくそうといろいろ努力をした結果、結局、自分に言い聞かせることしかないと気づいたようだ。その場合、なるべく強い文句で自分を脅した方が効果的だと思われる。

以来、わたしは欲心が出そうな場面になると、自分で自分のことをくそみそにやっつけることにしている。

「野地、このバカ。この最低野郎。1オンさせて、あわよくばバーディを取ろうなんて思うなよ。そんなことを思って打とうものなら、たちまち地獄へ逆落としだぞ。いいか……」

長い間、自分自身を罵倒し続けているとプレーの進行を妨げるから、短時間、最大級の表現で自分を脅し上げることにしている。最大級の侮蔑表現は悪口の得意な友人に教わっている。

※本連載は書籍『川淵キャプテンにゴルフを習う』（野地秩嘉 著）からの抜粋です。