何より販売店と一緒に商品を作ると、彼らは自分の意見が反映された商品を積極的に売っていく。100円PCの成功にはこうした背景があるわけだ。

もう一つのキーワード「負けを認める」とは、勝利すべき領域に経営資源を集中するため、あえて別の領域を切り捨てる判断を下すということである。

「我々はリソースが限られているので、すべてに勝とうとすると逆に勝てません。そこで『ここは負けてよし』とするかわり、ほかの強みを徹底的に押し出してお客様の信頼をいただく。要は、エリアが限定されるなどの弱点をしっかり説明したうえで、『こういう使い方はいかがですか』と提案していくのです」

例えば、一つのキャリアにモバイル通信を集約しようとしていたある大手企業に対し、「各キャリアのいいとこ取りをしたほうがメリットがある」と提案し、イー・モバイルが価格やスピードといった強みを発揮できる都心エリアのオフィスに絞って契約を獲得したことがある。

では、「負けを認める」判断の材料はどうやって得ているのか。その答えはやはり「現場に足を運ぶこと」と高島は言う。

そこには顧客の声や姿を直接見聞するだけでなく、パートナー企業と話し合い、さらに盟友関係を強化していく意味もある。だから高島自身、普段の仕事の中だけでなく、週末も大手量販店7~8店に足を運ぶ。それは同社の経営陣も同じという。

トップを含めた「足腰の強さ」がベースの営業施策と実施。そこにイー・モバイルの販売力の源泉がある。(文中敬称略)

※順位は電気通信事業者協会発表資料調べ

(大杉和広=撮影)