べーシックインカム(BI)とは、すべての国民に毎月一定額の現金を支給する制度のこと。英国のチャイルド・ベネフィットや日本の子ども手当はBIと似た制度だ。

BIの最大のメリットは仕組みのシンプルさにある。年金や生活保護をはじめとする様々な社会保障制度は仕組みが複雑で、給付額もわかりにくいが、これをBIに一本化すれば「1人月○万円」と金額が明確になる。労働意欲がなくなりにくいのもメリットだ。従来の生活保護などでは一定の所得になれば給付が打ち切られるため、その範囲内から抜け出せなくなりがちだった。

なお、BIが即、公的サービスの縮小につながるわけではない。京都府立大・公共政策学部教授の小沢修司氏は「子ども手当のような『現金給付』と待機児童の解消など社会サービスとなる『現物給付』を二者択一的に論じるのはナンセンス」と指摘する。

しかし、BIの導入には様々な壁がある。一つは財源だ。何らかの形での増税は避けられないだろう。

楽天証券経済研究所の山崎元氏は「BIの長所は『中抜き』による税金の無駄をなくすこと」と指摘している。年金や生活保護をBIに置き換えれば、それを担当する政府機関は不要になる。その分、導入には官僚の激しい抵抗が予想される。

そしてそれ以上に問題となりそうなのは「世論」だ。「BI導入のカギは社会的合意が得られるかどうか」(小沢氏)。「働かざる者食うべからず」という日本固有の“美徳”が、実は最大のネックになるのかもしれない。