実際、どれくらいの費用がかかるのか。中村氏に試算してもらった(図1~3:自己負担1割対象者の場合)。

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パターン別 親の介護にはこれだけかかる(図1~3)

一般に体の自由が利かなくなり介護の必要が高まれば、公的施設の特別養護老人ホームへの入居を考える。この場合、要介護3の標準的な利用を想定すると月額9万6000円の出費が見込まれる(図2)。

ただし、特養はいま全国的に不足ぎみで、入居希望者は順番待ちの状況だ。しかも政府は、高齢者の介護については在宅介護を中心とする方針を決めており、東京都区部など特に入居待ちが多い一部地域を除いては、今後、入居定員が増える見通しはない。

介護が必要なのは倒れてから7年

そこで目を向けざるをえないのが、有料老人ホームなどの民間施設だ。これまで民間施設は特養に比べて入居費用が格段に高く設定されていたが、最近は、一時に比べて低料金化が進んでいる。

「月の入居費用が15万円を超えると入居者が集まらない時代になりました。東京都区部の施設でも、月14万8000円といった設定です。食費などの費用がかかるため、月の負担額は20万円ほど。このレベルだと、多額の年金がもらえる人でないと入居は現実的ではないかもしれません。となると、特養に入居できなければ、必然的に在宅介護を選択することになるでしょう」(中村氏)

在宅介護を選択した場合の費用負担はどうか。

図1に示した要介護3のケースで、月に6万5000円が必要だ。しかもこの場合、金銭的費用だけではなく、介護のために家族が拘束されるコストも相当なものである。介護施設入居者は、入居から平均して7年ほど生きるとされている。在宅介護の場合も同様の期間を介護に割くものと覚悟しなければならない。