――そもそも、会社の机というのはきれいにしておかなくちゃいけないものなんでしょうか?

仕事ができる人の机の上は、だいたいきれいです。「机の上の状態を見れば、その人の脳みその中がわかる」と言う人もいるほどです。

――出口さんはどうやって整理されていますか?

整理・整頓には、僕も試行錯誤しました。結局行き着いたのは、資料が1つ増えたら古い資料を1つ捨てるという方法です。増えた資料と同じ量だけ捨てて、全体量を一定にコントロールしようという方法です。

――でも、捨てられない資料もあるでしょう。

まず、資料は目的別にファイルを分けます。それぞれ新しいものが1番上にくるようにして、新しい資料を上に置くと同時に、1番下の資料を捨てるのです。そうすれば厚さは常に一定です。

1番下の資料が大事で捨てられなければ、その1つ上を捨てる、それも大事だったら下から3番目を捨てる。

――出口さんは本がお好きですが、本は捨てられるんですか?

昔に比べれば捨てられるようになりました。

――捨てる本はどうやって決めるんですか?

直感です。オフィスには小さな本棚が1つしかなく、秘書から「本はこの本棚の分しか置けません」と言われています。ですから、入りきらない本は捨てるか、家に持って帰るしかありません。

――じゃあ、家には本が溢れているんじゃないですか?

家には……本はそれほどないですね。

――それはまた不思議です。どういうことですか?

家族が勝手に捨てますから。

――えーっ! 大事な本を勝手に捨てられて、許すんですか?

許すも許さないも、捨てられてしまったら仕方がない。

机の上に置いたり、ソファの上に置いておくと、いつの間にかなくなっているので「あれ、どうしたの?」と聞いたら、「ソファの上に放ってあったから、いらないと思って捨てました」と。

何度もこういう痛い目に遭うと、大事な本はきちんと本棚に入れるようになります。

このように机の上が汚くなりがちな人は、周囲の人に「机の上に置いてあるのはゴミだから、いつ捨ててもらってもいいですから」と言っておく方法があります。私の家族のように、遠慮なく捨ててくれるでしょうから。

――今度、ご家族に取材を申し込んでみます……。

Answer:資料が増えると同時に、いらない資料を捨てる習慣をつけましょう

出口治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険会長兼CEO

1948年、三重県生まれ。京都大学卒。日本生命ロンドン現法社長などを経て2013年より現職。経済界屈指の読書家。
(構成=八村晃代 撮影=市来朋久)
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