政治的な話に関しては、「知らないやつがしゃべるな!」という態度の人もいますね。たとえば安保法案について自分の考えを整理しようと思ってちょっとネットに書き込んだりすると、「こいつは何もわかってない」とか「信じがたい発言」みたいなことを言われたりする。その件に関しては、新日本プロレスをV字回復させたブシロードの木谷高明社長が、「すべてのジャンルはマニアが潰す」という名言を述べておられます。僕がツイッター上で発言しちゃいけないことのトップ5って自分のなかであるんですが(もちろんここには書きません)、共通しているのはマニアというか、コアな人たちが仕切っている分野であるということです。

コアではなくライトな人、新参者の素朴な感想が素晴らしいという寛容さを持っているジャンルは栄えて市場が広がっていく。でもそれがまたマニア化していくとより知識が豊富で思いが強い豊富な人たちによる排他性が強くなってきて、ヒエラルキー化し、階層の下のほうの人たちが排除されていって、結局コアだけが残る。この人たちの高齢化とともにジャンルが衰退していくっていうのがずっと繰り返されてきたことじゃないかと思います。

スポーツでも一部はそういう世界で、たとえばカープが全国区で人気が出たり、ラグビーのワールドカップで日本代表が活躍したりすると、ファンが一気に増えますが、そうすると従来からのファンが新しいファンを「にわか」呼ばわりする現象があります。でも「にわか」の一部が次世代のコアファンになる。だから「にわか」を排除すると新人が入ってこない会社みたいになってしまいます。

ときに過激に偏りがちな政治的な発言とうまくつきあうにはどうしたらいいか、という問いに話を戻すと、そういう発言はある人には単なるプレーやガス抜きだったり、またある人には依存の対象だったりして、それほどリアリティのあるものではないと思って受け流すしかないのではないでしょうか。そして、無理に同調をせまられたり、絡まれたりしたら逃げる、ということですね。スッキリした答えにならなくてすみません。

為末 大(ためすえ・だい)
1978年広島県生まれ。陸上トラック種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2014年10月現在)。2001年エドモントン世界選手権および2005年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。シドニー、アテネ、北京と3度のオリンピックに出場。2003年、プロに転向。2012年、25年間の現役生活から引退。現在は、一般社団法人アスリート・ソサエティ(2010年設立)、為末大学(2012年開講)、Xiborg(2014年設立)などを通じ、スポーツ、社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。
http://tamesue.jp
(撮影=鈴木愛子)
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