「就活改革」につながる制度変更は可能か

実際、11月13日の政府による2回目の会議でも、経団連と大学側の主張は平行線をたどった。政府内からは経団連の対応を「朝令暮改」(馳浩文部科学相)との批判もでた。そもそも、採用活動開始時期の繰り下げは、安倍晋三首相が学業を優先し、長期化する一方の就活期間を是正するため、経団連に要請した経緯があった。経団連は米倉昌弘会長(当時)が受け入れ、13年11月に新ルールを策定した。

当時の経団連は時期繰り上げに消極的だったことから、政府に押し切られたとの思いは強い。14年6月に就任した榊原会長に「当事者でない」との意識は強く、ためらいなく、今回の見直しに踏み切った。経団連は「現行ルールをこのまま継続しては学生側に生じる問題が余りにも大きい」(榊原会長)と判断し、選考解禁の2カ月前倒しを17年春卒予定の学生に限り「最低限見直す」(同)暫定措置と位置付けた。大学側も20日になって渋々これを受け入れた。

再来年の17年以降については、経団連内で検討し、新たなルールを策定する方針だ。経団連ルールは会員企業に限られ、今年の就活でも顕在化した会員以外の企業を中心に選考解禁以前に学生に内々定を出すといった行為がなくなる保証はない。

安倍政権は「1億総活躍社会」を掲げた以上、経団連任せの採用活動時期の取り決めに終わらせず、国際的に特異な新卒一括採用の是正や通年採用の拡大、いわゆる「第2新卒」の採用機会を増やすなど、「就活改革」につながる制度設計に取り組む必要がある。振り返れば、「協定破り」が横行した結果、当時の「就職協定」は財界主導で1996年に廃止された。今回の“騒動”でルール廃止論は一切、財界から出ることはなかった。それだけ、骨のある財界人がいなくなったということだろうか。

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