投資対象の情報がなくても投資に成功

その手紙は、過去の株式以外の投資に関する話から始まる(「株主への手紙」/2014年2月28日より、以下抜粋および引用。プレジデント編集部訳)。

そのうちの1つは、米中西部の農地への投資である。

「86年に、私はオマハの北50マイルのところにある400エーカーの農場をFDIC(連邦預金保険公社)から買い取った。購入価格は28万ドルで、倒産した銀行が数年前にその農場に融資した金額をかなり下回っていた。私は農場経営のことなど何も知らなかったが、農業が好きな息子から、この農場でトウモロコシや大豆がどのくらい収穫できるかと、運営費がどのくらいかかるかを教わった」

農業は不作の年もあるだろうし、豊作で価格が低迷することも考えられる。しかしバフェット氏は、この投資に下降要素はないと判断。そして、この投資に農場経営などの特別な知識や情報は必要なかったという。結果として、農場の収入は3倍に増え、その資産価値は購入価格の5倍以上になった。

それにもかかわらず、バフェット氏は「いまだに農業については何も知らず、農場にもつい最近の訪問を含め2度しか訪問していない」。

投資家が、投資対象の情報を丹念に収集しないままに投資することができるだろうか? しかも彼は、長年にわたり、そこから収益を挙げている。

バフェット氏が、この実例を基に述べている投資の基本から、成功のヒントが窺えるかもしれない。

まず彼は「投資による十分な利回りを得るためには投資のエキスパートである必要はない」と説く。ただし、投資ビギナーにとって重要なのは、その次である。

「エキスパートでない場合は、自分の限界を認識して、道理にかなった収益を確実に挙げられるコースを選ばなければならない」

投資ビギナーは、すぐに収益が挙げられる大物を狙ってはいけない。自分の実力に見合った収益を堅実に求める道を選択することが大切なのだ。

続いてバフェット氏は、検討中の資産の将来の生産性に注目すべきであるという。対象とする資産が将来どのくらい利益を生むかを考え、おおまかな見積もりができないのであれば、その資産のことは忘れて、他を探すようにともアドバイスしている。

「将来の生産性ではなく将来の価格変動を当てにしているとしたら、それは投機というものだ。悪いことではないが、私自身は投機は成功しないと思っている」

それでは、将来値上がりしそうな銘柄を選んで投資するといった私たちの行動は投資ではなかったのだろうか?