Qなぜアルツハイマーは女性に多いか
(a)変化に乏しい生活を送るから (b)性差の原因はわかっていない

女性は主治医を受け入れやすい

大病院志向の強い日本で、患者1人ひとりの状況に合わせた質の高い医療・看護を提供するには、限られた人材や財源の有効活用が必要になる。そのためには地域で信頼できる「かかりつけ医」を持ち、その医師をまず受診する仕組みをつくることが重要だと私は考えている。

そこで大病院志向に男女の性差があるのか、私が勤務する東京慈恵医大病院の外来受診患者動向を調べたところ、(女性のほうが大病院志向は強いだろうという私の予想とは反対に)男性のほうが強いという結果になった。20歳から39歳までは女性患者が多く、40代で男女はほぼ同数になる。それが50代以降は年齢が上がるにつれて女性より男性受診者が増え、男女差は顕著になる。男女別入院患者数も外来患者数を反映して同じ傾向を示すが、特に入院患者数では30代の女性が男性の約2倍になる。その理由として婦人科疾患や乳がんなど女性特有の病気が30代、40代に多いと考えられる。

男性の有病率が50歳以降に高くなる背景があるとはいえ男性外来患者には、大学病院の偉い先生に診てもらいたい思いがあるのだろう。特に会社組織のヒエラルキーの中で長いこと働いてきた中高年の男性がおちいりがちな一種の“思想”ともいえる権威主義的な考え方の影響を受けているのではないか。組織を信じる気持ちが強く、「慈恵医大なら間違いはないだろう」という思いで外来受診している人もいると思う。

一方、女性は組織の権威を頼って医療機関を選ばずに、人を信じ口コミを大事にして評判のいいクリニックを探し、自分の判断で決めている人が多いのではないか。その点で女性のほうが気に入ったかかりつけ医を見つける柔軟性があり、地域の主治医を受け入れやすいともいえる。